hagoromo 東京での愛人生活が突然終わり抜け殻のようになってしまった女性が、川を中心に広がる故郷の街へ帰り、心身ともに少しずつ回復していく様子を綴った恋愛小説。


18歳から8年に渡って続いていた恋愛は、世に言うところに不倫であった。
しかしその関係が表立って、呆気なく恋は終わりを迎える。
ほたるに何の選択肢もないかのように、ぱたぱたと片付けられ、二人で会う為に男が購入したマンションだけが残る。
毎日を悪夢のように感じるほたるは、帰省する。
祖母が営む不思議な喫茶店「ハイジ」を手伝いながら、幼い頃のこと、父のこと、母のこと、父が再婚しようとした女性のこと、その子供・るみのことなどを思い出し、東京での生活を振り返り始める。
そんな中、どこかで見たことあると感じる青年と街ですれ違う。
その青年とはどこで会ったのかさっぱりわからないほたる。
祖母に話すと、祖母もその青年に憶えがあるという。
偶然が偶然を呼び、その青年との繋がりやその青年の家族について知るほたる。
そうやって街の人と接していくうちに、恋に破れて傷ついた心が少しずつ再生してくる。
やがてほたるは気が付くのだ。
人の裏のない優しさや言葉たちは〝羽衣〟なんだと。


著者はあとがきで本書について「全くの、青春小説どまんなか!の作品です」と表現している。
確かに、よしもとばなな流青春小説と言えるかもしれない。
甘酸っぱいような、ほろ苦いような思いを味わう。
若い頃見た夢を思い出す。
少しずつ思いを募らせる、緩やかで穏やかな恋愛を感じる。
青春で恋愛小説かもしれない。
よしもとばななが得意とする恋・死・魂・夢などの要素を盛り込んだ長編書き下ろし作品で、心が澄み渡るような気持ちになれる1冊。


<新潮社 2003年>


著者: よしもと ばなな

タイトル: ハゴロモ