kanpo 第28回すばる文学賞受賞作で、漢方をテーマにした独身女性向けの長編小説。
題名ほど固くなく、恋愛や友情などを織り交ぜながら漢方で癒されていく主人公の姿が描かれている。


主人公・みのりは31歳。
独身で執筆業をしている。
未練のある元恋人が結婚することを聞いた後から体調を崩し、途方に暮れる。
複数の病院をまわるものの、なしのつぶて。
全く効果は無く、日に日に悪化していくのだ。
この原因不明の体調不良から抜け出したい一心で学生時代に通った漢方医を訪れることに。
どの医者もわかってくれなかったみのりの痛みを、漢方医は一発で理解し、痛みの場所を触診する。
驚き、治るかもしれないという希望が見えてくる。
漢方診療所での診察、処方、漢方のあれこれ、東洋医学についてなどみのりはそれらを知っていくことで癒され、少しずつ治っていくのを感じる。
飲み仲間たちの叱咤激励や親との会話など、30代独身女性の穏やかながら山あり谷ありの日常をユーモアたっぷりで描く。


ユーモアがたっぷりだけれど、独身女性の心理描写や漢方にまつわるエピソードはしっかりしており、読み応えがある。
恋愛と、それらに伴う体調不良は女性にはありがちな事で、なかなか人に打ち明けられない。
また、医者に通ったからといってよくなるものばかりではない。
西洋医学が一般的となっている昨今、注目の漢方という方法について少し知ることが出来るのもこの本の魅力である。
主人公と同年代の女性、漢方療法に興味のある方などにおすすめの1冊。



集英社 2004年>


著者: 中島 たい子
タイトル: 漢方小説