goth 第三回本格ミステリ大賞受賞作ながら、ミステリーかどうかは微妙だと感じた。
ホラーな要素も含んだミステリーといったところだろうか?
処刑や拷問といったものに興味を持つ高校生を主人公にした短編集。

表題作『リストカット事件』は主人公と友人・森野、そして化学教師の物語だ。
主人公・僕は教室の中ではクラスメートに合わせて笑ってジョークを言って過ごしているが、本当はそんなこととは縁遠い人間だ。
僕は今年の春先、世間を騒がせた連続手首切断事件~リストカット事件~に大変興味を抱いていた。
乳児、小学生、高校生、社会人とだれかれ構わず襲われている恐ろしい事件だった。
そんなことが起きていても、僕の日常は普通に流れ、テストもやってくる。
化学のテスト問題を手にしたいという思いから、化学準備室の清掃の手伝いを志願した。
準備室に居たのが、個性的な女生徒・森野だった。
森野は特に手伝うでもなく、講義室の片隅で読書をしているだけだった。
化学教師・篠原は彼女の存在を特に気にするでもなく僕に掃除の手順を伝える。
僕は言われたとおり片付けながらもテスト問題のメモを探す。
結局メモは手に入らなかったが、不思議な物を見つける。
それは、腕の先端が切断された人形である。
それが何を意味するのか僕にはわからないが、リストカット事件が頭に浮かんだのだ。
もしかしたら犯人は身近に居るのではないか?
僕は思いを巡らせ、ある計画を実行に移した。


他にも、連続殺人鬼の日記が記された手帳を拾ってしまい発覚していない事件の詳細まで知ってしまう『暗黒系』など、気分が悪くなるような猟奇的な事件を軸に僕と森野が事件を傍観し解決し消化していく物語が詰まっている。
『ZOO』を読んだ時も気持ち悪いと思った。
今回もそうだ。
でも読んでしまう。
不思議な魅力の作家である。

夏が近付きホラーの季節がやってきて、そういった類の本を読みたいと思っている方におすすめの1冊。


<角川書店 2002年>


著者: 乙一
タイトル: GOTH―リストカット事件