tobokusotawake 九州にある精神病院から逃亡する2名の患者のはちゃめちゃな夏の日を登場人物の故郷の方言を用いて描いた長編。


主人公・私は福岡の精神病院の開放病棟に入院している。
最近、躁状態と難聴が続き苦しんでいる。
薬漬けにされるのを恐れ、逃亡を計画する。
逃亡当日、偶然中庭にいたなごやんこと蓬田司を伴って夏の日に逃亡を図る。なごやんの家に寄り車を調達し、二人の逃亡はスタートする。
お互いのこと、家族のこと、目の前に広がる景色のこと。
二人は色々な話をしながら九州を南下していく。
目指すゴールはなんだろう?到達するところはなんだろう?
二人は無計画なまま車を走らせる。


ロードムービーのように九州各地を巡る物語は自分もこの逃亡劇に参加しているような感覚を与えてくれる。
九州に何度か行ったことがあり、その辺りも手伝って楽しめる部分もあったが、読み終えての感想は無に近かった。
この小説は読み手を選ぶと思う。
九州という舞台や、精神病患者への知識、方言を楽しむといった条件をクリアしてはじめて「面白かった」と言えるのではないだろうか?
私の場合は、わかっていても笑えない部分や流せない部分があり心にそれが澱のように溜まってしまって辛くなってしまい楽しみきれなかった。
著者の他の作品に期待したいと思った。


<中央公論社 2005年>


著者: 絲山秋子
タイトル: 逃亡くそたわけ