jinseibest10 直木賞受賞後の第一作目の短編集。
微妙なもやもやを抱えた男女をテーマにした物語が6編収録されている。


観光旅行』の主人公はヨシザキイツコ。
イタリアを一人旅している。
有給と勤続十周年のご褒美休暇を使ってめいっぱい休める2週間を利用し、同僚が「よかった」と言っていたイタリアに旅行に出た。
日本での生活から逃げたかったのだ。
20代の半ばから付き合っているハシヅメとの仲は煮詰まる一方。
同棲して4年になるが、殆ど会話も無く同じ屋根の下に居るだけの暮らしが続いていた。
二人の関係について話し合うこともなく、喧嘩をすることもなく、別々の部屋で共存していた。
そんな中マンションの更新がやってきて、同棲を解消するのかこのまま暮らし続けるのかを決断せねばならなくなる。
イツコは決断を迫られるのが怖いのと面倒なのとがあいまって、逃げ出すようにイタリアに来た。
心の整理もしたかった。
しかし、イタリアに来てもハシヅメに電話をすることもなく日々が過ぎていった。
ホテルを探しながら移動しまくり、気ままな旅を予定していたが、偶然出会ってしまった日本人母娘にペースを乱され苛立つ。
娘は自我が強く怒ってばかり、母は潔癖症で我侭で小言ばかり。
一緒にいて決して楽しい母娘ではなかった。
しかし、イツコは仏心が出てしまい、誘われるがままに夕食などを共にしてしまう。
我慢の限界が来たとき、自分のことを娘にぶちまけすっきりするイツコ。
そして、母娘に対しての気持ちにも変化が生じはじめる。


他にも、40歳目前の同窓会で初恋の人に会おうと浮き足立って参加するが辛い結末が待っている、表題作の『人生ベストテン』等、どこにでも居るだろう様々な年代の男女を主人公にした短編集。
期待して購入したので読み終えてがっかりしてしまった。
今までの著者の作品が頭にあったので、期待し過ぎてしまった。
ありきたりな設定と、ありきたりな結末といった感想しか浮かばず、「いまいちだな」という思いが最初から最後まで拭えないまま終わってしまった。
フリーター小説といったものとは遠いし、直木賞受賞作とも全く毛色の違う作品ではあるが、輝きのない1冊になっている。
共感も共鳴もなく、ただ読んだといった感じで残念。
短編なのと、読みやすい文章、よくある設定なので通勤などの暇つぶしには向いている1冊。


<講談社 2005年>


著者: 角田 光代
タイトル: 人生ベストテン