e-higeki 都心のインテリジェンスビルの警備員が出くわす、eビジネスに翻弄される人々を描く短編集。


主人公・篠山は50代半ばの警備員。
元金融マンでなかなかの凄腕だったが、トラブルがあり金融業界から足を洗い警備会社に就職した。
配属先は都心のインテリジェンスビル。
『eの悲劇』は何の因果か大手金融企業の警備に配属された時の物語である。
パートナーの達也と定期巡回をしていると、猫の鳴き声のようなものが聞こえてくる。
篠山は気になりその声を追う。
声の主は屋上に居た。
どうやって入ったのか、男が屋上に座り込んで泣いていたのだ。
年の頃は40代半ばといったところで、嗚咽を漏らしている。
篠山と達也は呆然としながら男の涙の理由を聞く。
eビジネスで一旗上げた男の栄光と転落、ネット上での証券取引にはまる達也、そんな二人を遠くから見守るように存在する篠山。
微妙なバランスで3人の会話は進み、嗚咽を漏らす程だった男が生気を取り戻し、どんでん返しがの結末までを描く。

全4話はどれも経済に詳しくなくても読み楽しめるものばかりで、前回読んだ著者の作品同様、満足した。
主人公も栄光と転落を味わっていたり、eビジネスなどをテーマにしているがビジネスや株よりも人間の奥底に焦点が当てられていて経済小説という偏りも無いのが私にはよかった。
連作になっていて、飽きることなく1冊読みきれた。


<講談社 2001年>


著者: 幸田 真音
タイトル: eの悲劇 (単行本)


著者: 幸田 真音
タイトル: eの悲劇―IT革命の光と影 (文庫本)