wakarebanasi 恋愛小説を読みたくなると必ず頼ってしまう作家、藤堂志津子の長編恋愛小説。


主人公・千奈は商社に勤めるOLで、今年とうとう30歳になった。
同棲中の恋人・高治は5歳年上。
3年の同棲生活、うまくいっていたと思う。
しかし、千奈はもう高治に興味がなくなっていた。
というのも、千奈には他に好きな人が出来ていたのだ。
相手は同じ会社の杉岡だ。
杉岡は花形営業マンとして500数名の社員の中にあって、その名を知らぬ者は居ないという目立つ存在だったのだが、今では閑職で有名な部署へ飛ばされていた。
入社して直ぐから杉岡のファンだった千奈は閑職に就く杉岡に更に興味を覚え声をかける。
当然既婚者である杉岡だったが、若い千奈から声を掛けられれば答えぬはずがない。
二人は程なく恋愛関係に陥る。
恋人の居る女と、妻の居る男。
一筋縄ではいかない恋愛。
お互いがお互いのパートナーと円満に別れようと懸命になるが、そこは山アリ谷アリで簡単な話ではなかった。


主人公の家庭環境や、普通の腰掛けOLの日々での社内恋愛など感情移入しやすいストーリーで、純粋に恋愛小説として楽しめる。
結末も、すっと心に入ってくるし抵抗なく読み終えることが出来る。
非常に後味のいい小説だ。
純愛でもなく、泥沼の憎愛劇でもなく、こんな恋愛相談受けたことあるなぁと思える程度の重さと軽さが共存しているのがちょうどいい。
昨今、涙を流すほどの純愛モノや怖くなるほどの不倫モノなどばかりが話題になっているが、こういった普通の恋愛モノも大切にしていきたい。
もちろん、私もそういった話題作を手にすることもある。
しかし、話題作やあまりにも刺激的な作品は面白いが、もう一度読みたいとは思わないのだ。
藤堂志津子の恋愛小説は、ふとした時にもう一度読みたくなることが多い。
穏やかな心で妻子ある方との恋愛をしている方、同年代の主人公の恋愛小説を求めている時にはおすすめの1冊。


<講談社文庫 2002年>


著者: 藤堂 志津子
タイトル: 別ればなし