spilarage 40歳を目の前にして、不倫の恋に清算をした女。その同級生で年下の若い男を殺した女。更に不倫相手の妻。
或る日突然3人の人生が絡み合う時、3人は1つの罪を共有し、なぜか助け合う。
40代の女3人の、女としての生き方と生々しい苦痛の日々を描く長編サスペンス。


前島美樹は中野の分譲マンションを購入した独身OL。
薬剤師の資格を活かし、外資系企業で医療機器の薬事申請業務に携わっている。
ローン返済に追われながらも充実した日々を送っている。
3年に及んだ不倫の恋を清算し、空虚さは残っていた。
そんな或る日、駅のホームで高校時代の同級生・岩井雪乃に会う。
懐かしいニックネームで呼ばれたからか、人恋しかったからか、その気も無いのに自宅住所や連絡先を印刷した名刺を雪乃に渡してしまう美樹。
そこから全てがズレはじめ、狂い始める。
雪乃は年下の若い男を殺した後、美樹の部屋を訪れる。
美樹の部屋にいる金魚を見る為だ。
その金魚は雪乃の死んだ弟が釣った金魚だったのだ。
そこからなぜか同居してしまう二人。
犯罪者と、それをかくまう普通の会社員。
二人の共通点は金魚と同い年の同級生ということだけ。
雪乃をかくまう日々だけでも大変なのに、今度は不倫相手沢口の妻・暁子が登場する。
暁子は人気ファッション誌の読者モデルをしている美しい女で、ふとしたことから知った夫の不倫をを問いただそうとマンションを訪れる。
しかし、暁子が遭遇したのは雪乃だった。
そこから3人の人生は絡み合い、思いもしない結末へと進んでいく。
美樹の母、険悪な仲が続くバツイチの実の姉、その娘。
暁子の姑、小姑、思春期の息子、気の利かない夫。
外野との絡みや主人公たちの心理描写がうまく描かれ、女達の不思議な仲間意識や守りあう気持ちへと繋がっていく。


結婚しそびれた女2人と結婚し子供を産み幸せに暮らしている女。
3人は昨日までは全く関係の無い3人だった。
ところが或る日、急速に距離を縮めて何かを共有し何かを守り何かを育てていこうとする。
3人3様の複雑な心を持ち、皆が悩み苦しむ。
穏やかな毎日とは疎遠の日々の中でとんでもないことを受け入れ、とんでもないことに首を突っ込んでいく様は興味深い。
なぜそんな選択をするのか?なぜそんな風に結論を出すのか?
同じ女でも、よくわからない部分もあるが、理由は説明できないが共鳴できてしまう部分もある。
一気に読めてしまうサスペンスだ。
結局、軸となる雪乃が殺した相手に対しての怨念や何故殺したのかについて書かれていない部分がこの物語を面白くしているのかもしれない。
殺したことがテーマではなく、殺した後の日々がテーマなのだ。
また、独身女性の生き方と孤独、悩みも切実だったり、既婚女性の辛さと虚しさの描写もリアルでそちらの部分でも読み応えがあったと言える。
今までに読んだことのない感じの物語で楽しめた。
お盆休みに入る方もいるかと思うが、お休みを利用してサスペンスをと思われている方におすすめの1冊。


<講談社 2005年>


新津 きよみ
スパイラル・エイジ