otokono 50代を前にし、寂しさから同居した男との生活を解消したい女。
その家族や街の人々の人間模様を織り交ぜて描く、ある1日の物語。


主人公・美衣子は生まれ育ったこの街で、母・桐と、同居人というか同棲相手というべきか微妙な男・青野と3人暮らしである。
桐は70を過ぎた今も達者で、自営していた理髪店とアパート3棟の経営者となり昼間は近くのカラオケ店「スワン」で過ごすきままな老後を送っている。
5年前、老後の寂しさを緩和したいと思い軽い気持ちから青野との同居を決め今に至っている。
美衣子はと言えば、2度の結婚に失敗し、その2人の夫との間に1男1女をもうけた。
娘・晴香は3度の結婚、3度の出産を経てまた再婚したいと言い出すし、息子・吉樹は12歳年上の未亡人・千代と生活しており、どちらも異性運がいいとは言えない。
もちろん、美衣子自身も例に漏れず男運が悪い。
青野のキャバクラ通いを同級生に聞いてから、青野との同居は軽率だったと後悔しはじめる。
カラオケ店「スワン」での出来事、初恋の人で障害者となった葉介の世話、娘たちの異性問題、母の老いへの心配など様々なことが頭を巡る中、最大の懸念事項は青野のことだった。
幾度か別れを切り出すものの、全く相手にされない。
家賃も食費も要らない今の生活を、青野がそう簡単に捨てる訳がない。
美衣子はどうやってこの男を始末するか、頭を捻る。
悩みに悩み、母・桐へ相談した。
母が出した解決策は、想像もしないやり方だった。


午前4時から午後10時までの6月のある1日を描いた作品。
中年男女の人間模様、恋愛模様かと思いきや、最後にとんでもない結論が出され驚く。
いやはや、おそろしい女の物語である。
表題「男の始末」の意味するところを最後に知り、呆然とした。
これまでの著作と同じテイストながら、物語の設定をある1日としたところが新しく、人間というのは1日で様々なことを考え、色々な場所へ出向き、怒ったり笑ったり落ち込んだりするもんだと改めて気付く。
そういう意味で斬新な作品だったが、ストーリー展開は陳腐な部分もあり、これまでの著者の作品のように楽しめた訳ではなかった。
最後に意外なオチがついたものの、とりたてて面白い作品だとは言い難い。
同年齢の女性が軽い気持ちで読む本を探していたら、おすすめする1冊。


<講談社 2004年>


藤堂 志津子
男の始末