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ドヴォルザーク 交響曲第9番 第2楽章
ベルリン・フィル ヘルベルト・フォン・カラヤン




静寂も喧騒もない。

土掘邪悪はただ歩いている。

光も影もない。

土掘邪悪はただ歩いている。

そこには時間も空間も無い。

土掘邪悪はただ歩いている。

空には輝く太陽も朧気な月も無い。

土掘邪悪はただ歩いている。

足元は草木も土さえもない。

土掘邪悪はただ歩いている。



ふと土掘邪悪は立ち止まった。

すると目の前に砂漠が広がっている。

空間が生まれた。

ふと土掘邪悪は後ろを振り返った。

そこには自分の足跡が残っている。

そこで時間が生まれた。

現在、過去、未来。

ふと土掘邪悪は上を見上げた。

そこには太陽が燦々と輝いていた。



ふと土掘邪悪が思う。

自分はどこに向かって歩いているのか。

目の前に高く聳える山脈が見える。

しばらく立ち竦む土掘邪悪。

先程まで燦々と輝いていた太陽が山の頂へと傾き、空は赤く染まった。

世界に色が振りまかれる。

傾いた太陽の反対側からぼんやりと青く反射する月が現れた。

土掘邪悪は思い出した。

自分は故郷への道を歩いていたのだと。

歩みを進め始めた土掘邪悪の足元には草木が茂っていた。

世界は再び鼓動を打ち始めた。

土掘邪悪はゆっくりと山の麓へ家路を急ぎ始めた。

周りから鳥たちのさえずり、川のせせらぎが聞こえる。

土掘邪悪の歩みに沿って動物たちが走り出した。


ふと土掘邪悪は思う。

世界は美しい。

小鳥のさえづりは音楽へと変わる。

土掘邪悪は幸せを感じた。

世界に喜びが戻り山の麓に家々が建ち並び、笑い声が響き渡る。

土掘邪悪は我が家へと辿り着いた。

ドアを開ける。

「お帰りなさい。」

美しい妻が土掘邪悪を出迎えた。

「ただいま。」



土掘邪悪は目を覚ました。

その横に愛する妻の姿はない。

呆然と虚空を見つめ空へ旅立った妻の面影を探す。

ふと外を見ると赤く色付いた木々から楓の葉がヒラヒラと舞っている。

愛する妻が別れの挨拶に手を振り続けている様に。


オシマイ