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愛の讃歌 ジャクリーヌフランソワ
そそっかしい牛乳屋さんはその日の朝、苗子と栓さまがカフェオレの無い朝食を済ませて学校に出かけてしまった後やって来た。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。
「は~い。」
「あ、あの・・牛乳屋です。」
「あ、はい。」
ドアを開けると牛乳屋さんは私の顔を見る間もなく頭を下げ始めた。
「すいません、すいません。」
「あ、いえ・・・。」
「本当に申し訳ない。」
「あ、大丈夫です。うふふ・・・。」
思わず笑ってしまうくらい必死に頭を下げ続けていた。
「あ、あの、これ、お詫びです。」
「えっ?」
「じゃあ、すいません、以後気をつけますので止めたりしないで下さい!お願いします。」
牛乳6本押し付けられた格好の私が返す言葉もないうちに、牛乳屋さんは深々とまた頭を下げていた。
「あ、あの。私、まだ朝ごはんまだなんです。トーストとコーヒー・・あ、牛乳あるからカフェオレ出来ますね。うふふ・・・。」
「あ、すいません。」
「ううん、そうじゃなくて、よかったらご一緒にいかがですか?」
私にしては考えられないお誘いをしてしまっていた。
「うわ~、僕はそういう嬉しいお誘いにはとても弱いんだけど・・・。」
「じゃあ、どうぞ。」
「う~ん・・・・ご馳走になりたいのはやまやまなんだけど、学校に遅れそうなんで・・・お誘いどうもありがとう苗子ちゃん。」
「あ・・・苗・・・」
「じゃあ、本当にスイマセンでした。」
そそっかしい牛乳屋さんは、また私の話を聞かずにさっさと走り去ってしまった。
また間違いを正す暇もなかった。
私は苗子じゃないのよ、牛乳屋さん。
でもそれからは、毎朝、牛乳屋さんと合う時だけ苗子になっちゃうのも素敵みたいだった。
素知らぬ顔で牛乳屋さんの口から本多くんの噂を聞いたり、苗子になりきって川島杏を語ったり・・・
びわの木登り楽しんだり・・・・
「ねぇ、杏、なんちゅうか本中華、最近ちょっとおかしいわよ。」
「えっ?」
「変に早起きだしさ~。あんた高校時代、私とタメで遅刻王だったじゃん。」
「あ、それは・・・・。」
そこに栓さまが口を挟んで来た。
「だって、牛乳屋さんは明け方に来るんだもんね~。」
「せ!栓さま!!」
「はぁ?何?牛乳屋さんって何?」
苗子が奇声をあげる。
「あ、いや、それは、あの・・・。」
「あんた、初恋の人はどうしたのさ」
そう・・・初恋の本多くん・・・・
2度めのデート。
綺麗なレストラン。
「僕、いつものセットで。杏ちゃんは何にする?」
う~む・・・メニューが読めない・・・・
「本多くん・・選んでもらえる?」
「あ、うん。じゃあ、僕と同じでいいかな?お肉料理なんだけど、美味しいんだ。」
「うん。」
料理が来るまで本多くんはずっとスマホをいじってる。
会話もなくしんとしたレストランで・・・私なにしてんだろ。
料理が来ると本多くんもスマホをしまってやっとこちらを見た。
「本多くんっていつもこんなお店に来てるの?」
「いや、たまにだよ。おれ、そんなに金持ちじゃないし。」
「私こんなお店初めてだよ。ほら・・・手が震えちゃてる。」
お水をカプリ。
「あ、杏ちゃん・・・それ・・・手、洗う水だよ・・・。」
あ・・・・本多くんが私を見る目がちょっと情けないものを見る目になってる気がする。
その後は前回のクラブでまた4時間遊んでお家へ帰る。
「ただいま・・・。」
「あ、お帰り~。」
「あれ?杏、どうしたの?元気無いじゃない。」
「えっ?あ、ううん、大丈夫だよ。」
そうは答えたけど・・・
頭の中には毎朝会う牛乳屋さんの顔が浮かぶ。
もうやめよう。
ゴメンね、本多くん。
初恋の本多くんは今の本多くんじゃ無いみたい。
今度のデートを最後にしよう。
そうしてちゃんと言おう。
【3年間文通してくれて本当にありがとう。とっても楽しい思い出でした。】
そう言おう・・・・。
続く
愛の讃歌 ジャクリーヌフランソワ
そそっかしい牛乳屋さんはその日の朝、苗子と栓さまがカフェオレの無い朝食を済ませて学校に出かけてしまった後やって来た。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。
「は~い。」
「あ、あの・・牛乳屋です。」
「あ、はい。」
ドアを開けると牛乳屋さんは私の顔を見る間もなく頭を下げ始めた。
「すいません、すいません。」
「あ、いえ・・・。」
「本当に申し訳ない。」
「あ、大丈夫です。うふふ・・・。」
思わず笑ってしまうくらい必死に頭を下げ続けていた。
「あ、あの、これ、お詫びです。」
「えっ?」
「じゃあ、すいません、以後気をつけますので止めたりしないで下さい!お願いします。」
牛乳6本押し付けられた格好の私が返す言葉もないうちに、牛乳屋さんは深々とまた頭を下げていた。
「あ、あの。私、まだ朝ごはんまだなんです。トーストとコーヒー・・あ、牛乳あるからカフェオレ出来ますね。うふふ・・・。」
「あ、すいません。」
「ううん、そうじゃなくて、よかったらご一緒にいかがですか?」
私にしては考えられないお誘いをしてしまっていた。
「うわ~、僕はそういう嬉しいお誘いにはとても弱いんだけど・・・。」
「じゃあ、どうぞ。」
「う~ん・・・・ご馳走になりたいのはやまやまなんだけど、学校に遅れそうなんで・・・お誘いどうもありがとう苗子ちゃん。」
「あ・・・苗・・・」
「じゃあ、本当にスイマセンでした。」
そそっかしい牛乳屋さんは、また私の話を聞かずにさっさと走り去ってしまった。
また間違いを正す暇もなかった。
私は苗子じゃないのよ、牛乳屋さん。
でもそれからは、毎朝、牛乳屋さんと合う時だけ苗子になっちゃうのも素敵みたいだった。
素知らぬ顔で牛乳屋さんの口から本多くんの噂を聞いたり、苗子になりきって川島杏を語ったり・・・
びわの木登り楽しんだり・・・・
「ねぇ、杏、なんちゅうか本中華、最近ちょっとおかしいわよ。」
「えっ?」
「変に早起きだしさ~。あんた高校時代、私とタメで遅刻王だったじゃん。」
「あ、それは・・・・。」
そこに栓さまが口を挟んで来た。
「だって、牛乳屋さんは明け方に来るんだもんね~。」
「せ!栓さま!!」
「はぁ?何?牛乳屋さんって何?」
苗子が奇声をあげる。
「あ、いや、それは、あの・・・。」
「あんた、初恋の人はどうしたのさ」
そう・・・初恋の本多くん・・・・
2度めのデート。
綺麗なレストラン。
「僕、いつものセットで。杏ちゃんは何にする?」
う~む・・・メニューが読めない・・・・
「本多くん・・選んでもらえる?」
「あ、うん。じゃあ、僕と同じでいいかな?お肉料理なんだけど、美味しいんだ。」
「うん。」
料理が来るまで本多くんはずっとスマホをいじってる。
会話もなくしんとしたレストランで・・・私なにしてんだろ。
料理が来ると本多くんもスマホをしまってやっとこちらを見た。
「本多くんっていつもこんなお店に来てるの?」
「いや、たまにだよ。おれ、そんなに金持ちじゃないし。」
「私こんなお店初めてだよ。ほら・・・手が震えちゃてる。」
お水をカプリ。
「あ、杏ちゃん・・・それ・・・手、洗う水だよ・・・。」
あ・・・・本多くんが私を見る目がちょっと情けないものを見る目になってる気がする。
その後は前回のクラブでまた4時間遊んでお家へ帰る。
「ただいま・・・。」
「あ、お帰り~。」
「あれ?杏、どうしたの?元気無いじゃない。」
「えっ?あ、ううん、大丈夫だよ。」
そうは答えたけど・・・
頭の中には毎朝会う牛乳屋さんの顔が浮かぶ。
もうやめよう。
ゴメンね、本多くん。
初恋の本多くんは今の本多くんじゃ無いみたい。
今度のデートを最後にしよう。
そうしてちゃんと言おう。
【3年間文通してくれて本当にありがとう。とっても楽しい思い出でした。】
そう言おう・・・・。
続く