自己紹介が終わった来未は新しく与えられた自分の机に座り、荷物を足元に置いた。
係長が来未に何やら指示を出していた。
この時期、拓海の係はあまり忙しくない。
唯一、拓海の担当する仕事が忙しいだけである。
毎年自分の誕生日は夜遅くまで残業で、日付が変わることもよくある。
そんな誕生日をここ数年過ごしてきているのでいいイメージはなく、
この日も新しく入ってくる職員に期待を膨らませるだけで誕生日のことなど忘れていた。
係長の指示も一段落し、難しそうな本を読み出した来未。
拓海が1年4ヵ月してきた仕事を彼女に引き継がなければならない。
今の忙しくない時期に少しずつ仕事を覚えてもらおうと来未に向かって話をすることにした。
拓海 「車、何に乗ってるの?」
来未 「えっ・・・ラシーンです。」
拓海 「あっ ラシーンなんだ。昨日までここに座っていた臨時さんもラシーンだったよ。」
来未 「・・・・・・。」
これが拓海と来未が初めて交わした会話だった。
話すきっかけがなく、車好きの拓海は男友達に対してするような質問をし、来未はあっけにとられ返答。
来未 (なんなのかな~ この人。)
それから先は、拓海の仕事が忙しかったせいもあり、あまり会話もせずに1日が過ぎた。
拓海の係に配属された新採職員は来未だけだったが、二つ隣の係に若い男性の新採職員が配属された。
もちろん拓海と同じ課であり、来未とも同じ課である。
彼の名は“颯太(そうた)”
来未は拓海の2歳下、颯太は来未の2歳下。
この後、颯太は拓海と来未の人生に大きく関わっていくことになる。。。