血管のなかを血のカタマリが流れると | ホームホスピス われもこう

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熊本にある介護施設「ホームホスピス われもこう」のブログです。


 2ヶ月ほどまえ、ある高齢の人が肺炎に罹り、救急車で病院に運び込まれました。直後はかなりの重態で、持病である狭心症と心房肥大のこの人の心臓は停止寸前の状態であったようです。しかし、主治医の適切な処置によって肺炎は治まったのですが、数日後に脳梗塞を発症し、それ以来自立して座る姿勢を維持できなくなりました。病院のベッドの上に横たわっている患者の脳のなかでは、脳梗塞はその後も緩やかに進行し続けたと推定されます。
 このような経過のなかで主治医は患者の持病である心疾患と、上の値が200を超える高血圧(血圧降下剤を30年以服用し続けている)のことを考え合わせて、血栓塞栓症を予防する薬の投与を断念しました。むつかしい判断でした。その結果、先ほどのように脳梗塞はじわじわと進み、意識レベルの低下が進んで患者は今も寝たきりです。MRIによる精密検査の結果、過去にも軽い脳梗塞を起こしていた痕跡が見られるようです。
 この患者の場合、狭心症の他に非弁膜症性の心房細動患者に該当するのかもしれません。心房細動は狭心症などとはちがって、直接突然死を誘発するものではありませんが、心房内の血流を悪くし、その結果、心房内に血液のかたまりができやすくなります。発生した血液のかたまりは、血流に乗って脳血管に達したのち、突然血管を詰まらせ、脳細胞を壊死させてしまうのです。これが総卒中を代表とする血栓塞栓症です。

 先ほどの患者の場合、全身の血管がもともと標準的な経より細いので、脳梗塞以外にも全身性の血栓塞栓症が引き起こされる可能性は無きにしもあらずです。予防には抗凝固剤のワルファリンという薬剤が一般的に使われていますが、昨年からはリバーロキサバンも保険適用となっています。
 ただし、抗凝固剤というだけあって何れも出血の副作用があり、他に肝機能異常、妊婦服用時の催奇形成などの副作用も確認されています。
 人間の血管内の血液の流れが滞ることは、エコノミー症候群や上記の心房細動に見るように、血栓塞栓症という厄介な結果をもたらすことを肝に銘じておく必要がありそうです。その上で高齢者の方々が入居されている施設でも気配りが大切です。
                                      (南風)