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電動二輪、普及“フル加速” 震災・ガソリン高で「手軽さ」脚光

フジサンケイ ビジネスアイ 5月18日(水)8時15分配信

電動二輪、普及“フル加速” 震災・ガソリン高で「手軽さ」脚光 
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テラモーターズが販売している電動バイク(写真:フジサンケイビジネスアイ)
 東日本大震災を機に、電気だけで走る電動二輪車に注目が集まっている。被災地だけでなく首都圏でも一時的にガソリンが不足したり、価格上昇傾向にあったためだ。二輪車大手のヤマハ発動機やベンチャー企業の製品が売れ行き好調なほか、大手企業の参入も相次いでいる。電気自動車(EV)の市販が始まっており、二輪車でも“電化”が進むのか。

→テラモーターズは、充電器と荷台ケースが別売なので、

実売は12万円を優に超える。

しかも、販売店の利益は20%ほどでしかない・・・。


 ◆ベンチャー受注急増

 「首都圏を中心に、充電するだけで手軽に扱える乗り物として注目度が一気に増した」。こう話すのは、電動二輪車のベンチャー企業「テラモーターズ」(東京都渋谷区)の担当者だ。

 同社は昨年4月から中国で委託生産した個人向け電動二輪車を9万9800円からという低価格で発売した。今年2月までの累計販売台数は約300台だったが、震災後には家電量販店やホームセンター、二輪車販売店など約1000店ある契約店からの受注が増加。3月は約250台を販売、4月も150台近くを受注し、2月までの累計台数をすでに上回った。

→もう抜いている?


 低価格に加え、家庭で充電できるなどの点が受けた形だ。同社では4月から無段変速機付きの業務用車種2種を追加販売した。新機種は埼玉工場(松伏町)で生産する上位モデル(29万4000円から)で、これにより「2011年度は2000台の販売を目指す」と意気盛んだ。

 テラモーターズなどの電動二輪車を扱う家電量販店のノジマも、震災発生後から店頭での販売や問い合わせが増えた。例えば、埼玉・大宮店では「3月は5台、4月は2台を販売した」という。このため、3月19日からは電動二輪車を試乗できる店舗をそれまでの3店から78店舗に大幅に拡充し、拡販する構え。

 ◆ヤマハは“再挑戦”

 “本家”の二輪車メーカーも負けていない。ヤマハ発は昨年9月、業界に先駆けて電動スクーターを発売した。価格は25万2000円と高めだが、当初の年間販売目標1000台は、1年足らずの現時点ですでに1600台を出荷したという。

 実は、ヤマハ発は02年に電動二輪車を販売したが、07年には撤退した経緯がある。当時はまだ電動系の乗り物に対してなじみが薄く、販売が伸びなかったため。しかし、現在は環境意識の高まりやガソリン価格の上昇、さらにEVの市販などで電動に対する消費者の意識が変化。欧州や台湾などでは電動二輪車の需要が拡大していることもあり、同社は今月、静岡県磐田市に電動二輪車などの工場用地として4万6000平方メートルの土地を取得したばかり。

 昨年2月に策定した中期経営計画では電動二輪車を重点事業の一つとして打ち出しており、「将来的には世界の電動二輪市場でトップシェアを目指す」と成長戦略に組み込んでいる。

 電動二輪車市場は、震災前までベンチャー企業の製品が中心だったこともあり、消費者の認知度も低く普及台数も少なかった。矢野経済研究所の調べによると、10年の国内出荷台数は、前年比2倍超ながら9000台にとどまったもよう。しかし、今後は二輪車大手の参入などで認知度が高まることなどで、13年には4.5万台、15年には9.5万台に伸びると予測する。

 ◆電池コスト・走行距離改善 拡大のカギ

 成長市場をにらみ、異業種などの参入も本格化してきた。

 出光興産は、子会社が運営する系列のガソリンスタンド20店舗を通じて、自動車用品メーカーの「プロスタッフ」(愛知県一宮市)製電動二輪車の販売を4月から開始した。スタンドの収益源を多角化するのが狙い。

 伊藤忠商事系の燃料商社「伊藤忠エネクス」は、今月10日からバッテリーの取り外しが可能な台湾製の電動二輪車を全国約20カ所のガソリンスタンドで販売を始めた。同社は今年度末までに販売拠点を約700店舗に増やし、初年度2000台の販売を計画している。

 走行時の排ガスがゼロの電動二輪車の市場拡大に期待が高まるが、課題もある。フル充電までの時間が6~9時間と長く、走行距離が50キロ以下と短い点だ。

 テラモーターズは鉛電池の一種であるシリコンバッテリーと呼ばれる電池を、ヤマハ発はリチウムイオン電池を使用しているが、ガソリン二輪車と競争するには改善の余地は大きい。

 こうした点もあって、昨年12月から事業者向け電動二輪車(本体価格45万4650円から)のリース販売を始めたホンダでは「まだ走行距離が短く、個人向けとして販売するには時期尚早」と慎重姿勢だ。

 ある証券系アナリストは「走行距離を伸ばすにはリチウムイオン電池が本命だが、まだ価格が高く、車両価格も高くならざるを得ない」と、問題点を指摘する。

 それでも、国内二輪車市場の縮小が続く中で、電動二輪への期待は大きい。参入企業が増え、要となる電池の技術開発や量産によるコストダウンが進めば、“街乗り”需要を取り込んで急拡大する可能性もある。(阿部賢一郎)