(久しぶりの「女の人生すごろく」です (//・_・//))


父を看取った後、夜間大学の給費奨学生となり
プロの学生として、働きながら
教員免許を取り卒業を果たした。

(成績が下がれば奨学金が打ちきりになる。
もともと「女に教育は要らない」という
母や親戚に反対されながらの
入学だったこともあり、経済的にも
中途退学しなくてはならなくなるので
高校の時より真剣に勉強していた)


昼間の勤務先では
妹と二人の弟たちを扶養家族にしており
こちらも学生気分は許されない。



舞台女優への夢は封印するしかなかったが
(それでも父の入院先に通いながら
研究生として一週間だけ舞台に立ち
一本だけ他県放映のお米のCMに出演。
即興で新妻を演じ、NGナシだったのが唯一の誇り)


舞台写真



儘ならない青春だったが、心の中の劇場だけは
失わずにいたくて、学内の文学研究会に所属し
会誌にほそぼそと戯曲を発表していた。


箱根には勤労学生だった頃の職場旅行、
後に通ったシナリオ講座同期生の卒業旅行、
そして脳梗塞で休職中のリハビリ旅で訪れている。
なにか節目、節目に縁のある土地である。



(三度目の箱根の後、人事のエライ人に呼び出され
「リハビリ勤務して今よりお体が悪くなったら
本末転倒ですから病気療養に専念した方が……」と
優しくも冷たく告げられ居場所を失い退職。
そんな50代で始めたアメブロの方が
読者さんが多い
……何が幸せかわからないですね)


チケット


話はもどり

大学を卒業すると、心の中の劇場を映像化したい思いで
さらに働きながら映画や放送用のシナリオを学び、
頼まれて仲間の自主映画に出演したり
何本かはコンクールに出したりした。
(途中までは審査通過するが入賞は果たせず)



朝焼け


そんな23歳の時に書いた『卵』というシナリオに
大涌谷のシーンが登場する。


かつて関係のあった男と女が口に出せない想いを
黒い殻の卵をほおばることで伝えあう場面である。


もちろん「卵」には、ひとりの女性の内なる卵子、
かつて女優の卵であった若いヒロインの思いや
宿命といった意味も含まれる。



大涌谷に行くことができない日が来るとは思わなかった。

誰にも被害が出ないことを祈って
思い出の地に心を寄せて書いたワンシーンを抜きだし
ここに掲載いたします。


若き日の拙いシナリオなので
読みにくかったら、ごめんなさい。

皆さんの心のスクリーンの映画監督になった気分で
読んでいただけたら幸いです。


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○ 箱根・大涌谷
  
  富士が光っている。

  黒玉子茶屋の傍。
  巣瀬、袋をあける。真っ黒な卵である。
  
  下の方で火山から湧き出す温泉池に網を入れ
  卵をゆでている。
  真っ白い卵がみるみる黒たまごになる。
  黒玉子茶屋の看板。
  
  (中略)
 
  巣瀬と芙由子だけが残される。
  二人の間に風が渡っていく。


巣瀬「……卵でも食べようか」
芙由子「ええ」


  巣瀬、黒い卵の上半分の殻をむく。
  白いゆで卵が頭を出す。

  巣瀬、卵を芙由子の口元に持っていく。
  芙由子、一口、食べる。
  しろみの部分に芙由子のピンクの口紅の跡が
  かすかにつく。

  巣瀬、じっとそれを見つめると
  今度は自分が口紅のついた所を食べる。


芙由子「おいしい?」
巣瀬「ちょっと……イオウのにおいがするな、
 この卵」


  芙由子の髪が風になびいている。


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P.S.今は色気のない病院の話題ばかりで
(時たま、ちょいエロな表現はしますけど)
なかなか恋のはなしって書けないなぁ。
女性ホルモン減少中。。。(*゚ー゚)ゞ



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