前篇 https://secret.ameba.jp/yuugekitai-21/entry-12578752789.html

中編 https://secret.ameba.jp/yuugekitai-21/entry-12578757032.html

後篇 https://secret.ameba.jp/yuugekitai-21/entry-12578759998.html

 

 第7位…『空の青さを知る人よ』
 『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』に続く秩父アニメ。
 本作は、13年前に両親を事故で亡くして以来、2人で暮らしてきた姉妹・相生あかね(声・吉岡里帆)とあおい(声・若山詩音)を描くものです。
 私が本作の中で特に印象深かった場面は、あおいがあかねのノートを発見する場面です。そこには家事のやり方が詳細に記載されていたのでした。本作ではあかねが現在のあおいの年齢について、13年前の自分と同じ年齢になったと感慨深く語る場面があるのですが、私の推測によれば、あおいも13年前のあかねと同じ年齢になってしまったと感慨深く思っているのではないでしょうか。
 私事で恐縮ですが私も10年位前は、10歳位上の諸先輩方に色々と尻拭いをして戴いたものですが、約10年経って私の年齢も当時の諸先輩方と同年代になってしまいました。しかし現在の私が当時の諸先輩方と同様に後輩の面倒を見ているかと言うと全くそんなことはなく、現在の私は大変お恥ずかしいことに約10年前に現在の私と同年代だった諸先輩方のレベルには全く達しておりません。
 そんなことを思いながら、あおいがあかねのノートを発見する場面を見た訳でありますが、本作で胸を打つのは、あおいが、あかねが家事に苦労したことに思いを馳せ、だからこそあかねにはこれ以上の苦労をさせたくないという思いやりです。今までお世話になったことに対する恩返しの感情は、とても大切な気持ちだと思います。
 以上を纏めると、本作は、自分に負担を強いながらも妹の為を思う姉の有り難さと、姉に感謝する妹の気持ちが、とても美しい作品だったと結論付けることができます。


<製作委員会>アニプレックス、フジテレビジョン、東宝、STORY、KADOKAWA
<配給>東宝
<アニメーション制作>CloverWorks
<スタッフ>原作・超平和バスターズ、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン/総作画監督・田中将賀、音楽・横山克、監督・長井龍雪
<出演者>相生あおい・若山詩音、相生あかね・吉岡里帆、金室慎之介・吉沢亮、新渡戸団吉・松平健、他

 第6位…『ぼくらの7日間戦争』
 宗田理の小説のアニメ映画化。実写映画『ぼくらの七日間戦争』と同一の時間軸となっています。
 本作の面白さとしてまず挙げられるのは、理不尽な大人と、それに反抗する少年少女による攻防戦です。戦いは廃工場を舞台に繰り広げられますが、工場の設備を巧みに利用して大人を撃退する少年達の智慧は見事です。

 このような物理的な攻防戦も充分盛り上がるのですが、本作は2019年に制作されただけあって、現代に相応しい攻防戦を用意します。それは、大人と少年がお互いにインターネット輿論を有利に導こうとした点です。本作は、現実のインターネット空間で繰り広げられている醜い騒動を、かなりショッキングに映画の中で再現しています。即ち、インターネット空間で話題になった人物がいれば「あいつは何という学校に通う何という奴だ」と個人情報を暴露し、 憎悪に満ちた罵詈雑言を繰り広げる行為です。本作ではこのような行為を極端に描くことで現実社会の我々に警告を与えていると言えるでしょう。
 インターネット上の炎上から、登場人物の間にも不信感が蔓延しますが、インターネットから生じる憎悪を超克したのは、生身の人間同士による面と向かった対話でした。
 インターネットに端を発する炎上事件が日常茶飯事である現代社会人に対して、人間関係の再考を促した作品であったと結論付けることができます。
 最後に1点付け加えると、本作は理不尽な大人とそれに反抗する少年少女の戦いの物語でしたが、同時に、理不尽な大人に反撥する大人の戦いの物語でもあり、理不尽な目に遭っている世の大人達をも勇気付ける作品でありました。


<製作委員会>KADOKAWA、ギャガ、電通、グローバル・ソリューションズ、ソニー・ミュージックソリューションズ、亜細亜堂、GYAO、TBSラジオ、ユニバーサル ミュージック、読売新聞社

<配給>ギャガ/KADOKAWA
<アニメーション制作>亜細亜堂
<スタッフ>原作・宗田理、脚本・大河内一楼、キャラクター原案・けーしん、キャラクターデザイン/清水洋、総作画監督・清水洋/西岡夕樹、音楽・市川淳、監督・村野佑太
<出演者>鈴原守・北村匠海、千代野綾・芳根京子、山咲香織・潘めぐみ、緒形壮馬・鈴木達央、本庄博人・大塚剛央、阿久津紗希・道井悠、他

 第5位…『ルパン三世 THE FIRST』
 『ルパン三世』シリーズの最新映画。本作品には、歴史の裏を探るワクワク感と、アクション面のワクワク感という二つのワクワク感が同居していました。
 まず歴史の裏を探るワクワク感についてですが、本作のストーリーは第二次世界大戦中のフランスの場面から始まります。ナチス占領下の北フランスかビシー政権下のフランスのどちらかと思われますが、このフランスの歴史が現代のストーリーに繋がっているのです。劇中世界の現代では、何とナチス総統であるアドルフ・ヒットラーが生存しているという噂が流れているのです。因みに劇中世界で本当にヒットラーが生存していた昭和40年の映画『クレージイ.キャッツ結成十周年記念映画 大冒険』(本篇監督=古澤憲吾、特技監督=圓谷英二)という作品もありましたが、『大冒険』にしても本作にしても、フィクションであるが故に、現実世界とは全く異なる現代史が描かれ、「一体この作品の世界では戦後の歴史はどうなっているんだ!!」と観客に興味を抱かせています。
 ところで、本作の劇中ではヒットラーが生存しているという噂が流れ、銭形幸一警部(声・山寺宏一)が昭和1桁生まれだと指摘されていることから、時代背景は映画が公開された2019年ではなく昭和末期頃と推測されます。
 続いて本作のもう一つの魅力であるアクション面についてコメントします。本作は、画面の中の要素が縦横無尽に動き回り、軽快さや迫力を生んでいました。例えば、飛行機同士の空中戦。山崎貴監督と言えば実写映画『永遠の0』(本篇監督=山崎貴、VFX=山崎貴)で迫力溢れる空中戦を描きましたが、本作でも手に汗握る空中戦が描かれています。また、天変地異を発生させるエネルギーの描写でも、この世の終わりかのような絶望感に満ちていました。本作のアクションシーンは、上記のように観客にスリルを与えるものばかりではなく、喜劇的なアクションシーンもあり、観客に喜怒哀楽の感情を与える娯楽性の高いものとなりました。次元大介(声・小林清志)がルパン三 世(声・ 栗田貫一)を助けると思いきや助けなかった場面では笑ってしまいました。
 最後に、上記以外に印象深かったシーンと、私の一番好きなシーンをご紹介します。印象深かったシーンは、悪役に良心が残されていたシーンです。悪役が心の底から悪人であったならば、登場人物の1人はショックを受けていたでしょうが、その登場人物のショックも多少は和らいだことでしょう。
 そして私の一番好きなシーンをご紹介しますと、予告篇でルパン三世、銭形警部、次元、石川五ヱ門(声・浪川大輔)、峰不二子(声・沢城みゆき)がズラリと並んでポーズを決めるカットがありまして、それが凄くカッコ良かったんですよ。しかし、本篇に存在しないシーンが予告篇に登場することもあり得るので、私はもしかして本篇には出てこないんじゃないかと心配していたんですが、終盤にちゃんとこのカットが登場してとてもカッコ良かったです。映画館のグッズ売り場で売られていたクリア栞にもそのカットが含まれていますのでご紹介致します。右側の下から3枚目です。

 

<製作委員会>トムス・エンタテインメント、日本テレビ放送網、東宝、バップ、読売テレビ放送、白組、阿部秀司事務所、札幌テレビ放送、ミヤギテレビ、静岡第一テレビ、中京テレビ放送、広島テレビ放送、福岡放送

<配給>東宝
<アニメーション制作>トムス・エンタテインメント/マーザ・アニメーションプラネット
<スタッフ>原作・モンキー・パンチ、脚本・山崎貴、音楽・大野雄二、CGスーパーバイザー・荒川孝宏、共同監督・波田琢也/中嶌隆史、監督・山崎貴

<出演者>ルパン三世・栗田貫一、レティシア・広瀬すず、ランベール・吉田鋼太郎、ゲラルト・藤原竜也、他
 

 後篇に続きます。