私はこの町へ越してきた。
まだ若かった旦那とアタシ。
保育園年少のtaaと年長の兄ちゃん。
まだ妹は生まれていない。
景色が違うのはもちろんのこと、空気も全く違うと感じた。
家の横にある公園に、カモシカが横切った。
少し離れた山道ではリスやサル、イノシシも見かける。
ふきのとうやワラビも初めて見た。
私達家族は、この場所で新しい未来が始まるんだ。
そんな期待と希望に満ち溢れていた。
しばらくして妹が生まれ、五人家族となった。
毎日が忙しくても、楽しかった。
なかなか帰ってこないtaaと兄ちゃんを窓から大声で叫んで呼び寄せた。
毎日怒っていたけど、毎日笑っていた。
今ではもう、遠い遠い昔のように感じる。
子供達にせがまれ、クワガタ探しに夜のドライブへ出掛けたことを思い出した。
これも、遠い昔のこと。
過去には戻れないのは知っている。
私だけじゃない。みんな一緒。
大丈夫。
私は大丈夫と
言い聞かせる。
それでも時々思い出す。
遠い昔の記憶は、楽しかったはずなのに悲しく切ない。
だけど、一番の宝物。