最近、毎日野暮用で外出していた為、
一昨日、街で目に止まったこの新聞の一面と
ニュースについても書く気力が無かったのですが
日本人が関与したニュースで英国では大きく報道されているものの
日本で報道されていない様なので、概要とリンクだけ載せる事にしました。
13ten!英国【十枚舌】なめてんじゃねぇよっ博客-見出し
左側のDaily Mail(女性に人気の高い全国紙)の一面に
載っているのは
Neil & Kazumi Puttick夫妻と一人息子のSamちゃん。
夫妻は、金曜日に病死したサムちゃんを追って
日曜日に、英国の「自殺の名所」と呼ばれる
風光明媚な崖から、一つのリュックにはサムちゃんの
亡骸を入れ、もう一つのリュックにはサムちゃんの
オモチャをたくさん詰めて飛び降りました。

月曜朝、捜索隊によって岸上げされた当初は
「一家心中かと(英語には「心中」という言葉は無く
 無理心中の場合は自殺&他殺の組み合わせで
 表現されますが)」考えられていたところ
調査の結果、夫妻の後追い自殺である事が判明しました。
13ten!英国【十枚舌】なめてんじゃねぇよっ博客-記事本文
BBC TVニュース事故報道
Death leap pair 'loving parents'(6月3日)
Suicide jump boy had died at home(6月2日)

日本女性であるカズミさんと夫のニールさんは
大学で知り合い12年前に結婚、5年前、サムちゃんが
誕生したものの、サムちゃんが18ヶ月の時
対向車の不注意運転でぶつけられるという事故に巻き込まれ
サムちゃんは首から下が麻痺、呼吸も自分ではできないので
酸素チューブをつけ車椅子に座る生活を余儀なくされる事となりました。

夫妻は、保険金で、新しく家を買い、そこを
サムちゃんの生活と治療に合わせて改造、医療設備も整え、
介護人が2人は必要なサムちゃんの為に
二人とも仕事はやめ、サムちゃんの介護と
成長の為に全てを捧げていたようです。
また、友人が設置してくれた募金サイトによって、
英国の無料医療システムでは手に入らない様々な
サムちゃんの成長に必要な最新テクノロジー機器をそろえ
その報告がサイトから派生したブログにも書かれていました。
===
募金用に友人が設置したブログ(多くの追悼がよせられている)
stuff4sam
年初、ブログへのお父さんの感謝と報告投稿
Sam's stuff - thanks to you
===
カズミさんが享年44歳である事を考えると
サムちゃんは、不妊治療の末、生まれたのかも
しれません。(ブログへの投稿には「サムちゃんの誕生は
奇跡だった」と書いてありましたが、それを
示唆したものかは判りません。)
年齢的、環境的に、二人目の子どもを考えていたかどうか
或は、それが精神的可能だったか、望んでいたかどうかは
わかりませんが、もう一人、子どもがいたら
その子のためにも、後を追う事は無かったと私は思います。

ニールさんのご両親は、海外旅行中で、息子の自殺どころか
孫の突然の病死すら知らなかったかもしれません。
警察が両親に連絡を取ろうとしていると報道されている所を見ると
おそらく老親に別れを告げる事もなく逝ったのではないでしょうか。


英国での報道では、
「無償の愛情でポジティブに尽力してきた夫妻だったが
 愛児を失った悲しみのあまり」自殺という書かれ方をしていますが
この夫妻は、悲哀ではなく、「次の世」を信じて、
むしろ明るい輝くような祈りの心の中で旅立ったのではないかと
私には思えてなりませんでした。
夫は
「きっとサムちゃんが一人で寂しいだろうと思って
 一緒になろうとしたんだ。」
と言っていましたが、それも、あるのかもしれません。

私は、自殺を肯定も否定もしません。
自殺が生きる勇気に欠けていた結果とは思わない。
戦時のように「生き恥をさらす」のが
死ぬ勇気に欠けていたとも思わない。
生きるのにも死ぬのにも、それぞれの理由がある。
それは本人にしか、わからないでしょう。

けれども
生きることを選べるのも
死ぬことを選べるのも
非常に恵まれた環境で
世界中の多くの人々には、その選択は無いと
偏見でも皮肉でも批判でもなく自死にふれる度に痛感します。

ひょっとしたら
どちらも既に運命に書かれているのかもしれませんが
表面的だけでも、尊厳のある選択と自発的行為がとれるうちは
私は「生」を選びたい、そして「生」を選ぶ事が可能な
精神的身体的環境で、居続けられる幸運を願うばかりです。


夫妻とサムちゃん、そして
残された家族と友人達の心に
平安が訪れるよう祈ってやみません。