先日、やっと『兎、波を走る』を観てきた。
多部さん💖が“アリス”役で、
潰れかかった遊園地のお話しと思っていた。
兎、波を走る(大阪)001
元女優ヤネフスヤマがアリスの話をもう一度と願い、
第一の作家に舞台の上演を依頼する。
さらに、第二の作家が現れ、第三の作家まで…

しかしおとぎ話のような話ではなかった。

そういえば、『兎、波を走る』のサイトで
野田秀樹氏はこう語っていた。
「兎、波を走る」は、知られざるコトワザである。
ほとんど誰にも知られていない。
誰も知らないコトワザを諺と呼んでいいのか?
という不条理は、おいといて、
私がこの芝居を書こうと決めた時、この題名が
それこそ向こうから走ってやって来た。
そして私は走るように書き始めた。
だが書き進むうちにいたたまれない気持ちに、
幾度も襲われた。
だから、この芝居を観た方々に
この「兎、波を走る」という響きから、
「なんともいたたまれない不条理」を
感じとっていただければと切に願う。
切に願うとしか申し上げようがない。
全力で書いたけれども
作家の無力をこれほど感じることはない。
「あー~」としか言いようがない
不条理なお話なのである。
だから話は不思議の国の「アリス」で始まる。
兎、波を走る(大阪)002
兎、波を走る(大阪)003
作・演出:野田秀樹
脱兎(安明進):高橋一生
アリスの母:松たか子
アリス:多部未華子
元女優ヤネフスヤマ:秋山菜津子
ロチア人チエホウフ:大倉孝二
シャイロック・ホームズ:大鶴佐助
東急半ズボン教官:山崎一
ドイチ人ブレルヒト:野田秀樹













《ここからは、ネタバレになる事柄が含まれます》
兎、波を走る(インスタ)
個人的な感想ですが、
このお話しって、
“不思議の国のアリス”をモチーフに
したものではなかった。
“不思議の国のアリス”では、
アリスが兎について行ってしまい、
不思議の国を旅して現実の世界に
戻って来るんですが、
アリスは、兎について行ったのではなく
兎に連れ去られて行ったんです。
不思議の国ではなく“妄想するしかない国”に。
“もう、そうするしかない国”に
そして、連れ去った兎を追いかける
アリスの母親の話しです。

この物語の中心にあるのは、
“拉致事件”
横田めぐみさんとその母親早紀江さんです。
そして、メタバースやAIと言った
仮想空間に傾倒する我々に
忘れてはいけない現実を
突きつけられていると感じました。

劇の最後に、アリスは
「おかあさん!おかあさん!」
と叫んでいます。