<>病院のロビーに大きなクリスマスツリーが飾られていました。
ツリーのしたにはプレゼントの箱がディスプレイされていました。飾りとわかっていても、きれいにラッピングされているので、「中身はなにかなあ」なんて考えてしまいます。
小さな男の子がその箱をほしいとぐずって、お母さんを困らせていました。「○ちゃんにはサンタさんがきてくれるんだよ。それとも、このプレゼントでいいのかなあ?」というお母さんの問いかけに、しばらく真剣な面持ちで考えていましたが、「チャンタたんのにすゆ!」と答えました。
一件落着。男の子は弾むような足取りでお母さんと行きました。

サンタさんのプレゼント、クリスマスには沢山のおもいでがあります。

これからクリスマスまでの間に、思い出を書いてみたいと思います。</


「ゼリーの思い出」
今の私からは誰も想像できないと思いますが、幼い時はとにかく体が弱かったんです。
毎年クリスマスの頃になると、熱を出して、寝込んでいました。
だから、テレビなどでクリスマスを盛り上げている番組も、熱でぼんやりした頭で見ていることが多かったですね。

あるクリスマスの朝、目を覚ますと枕元に小さなクリスマスツリーが飾ってありました。発砲スチロールの台に緑のモールの針金が三本交差して立ててあり、それに雪(綿)や、金のビーズがかざりつけてありました。
母が、「庭にサンタさんのプレゼントがあるよ」
と言いました。
庭のヤスデのした、雪の上に(そう、ゆきがつもっていた!)お皿に盛り付けたゼリーがあったんです。
手書きのカードがそえてあって、「merry  X’mas」と言う言葉と、きれいな女の人の絵が書いてありました。
冷たいゼリーは熱でほてった私にはとってもおいしくて、嬉しいご馳走だったんです。
この年、ほかにプレゼントをもらった記憶がないのですが、手作りのゼリーの味がわすれられません。やがて、それらは母が作ったことに気がつくのですが、後にも先にも母が絵を描いたのも、ゼリーを作ってくれたのも、このときだけでした。
弟が亡くなった年のクリスマスの事です。
きっと母にもいろんな想いがあったのだと思います。