今となっては言葉にして話せる事なのですが、当時は夢なのか現実なのか。何が起こったのか理解できずに、気のせいにするしかなかった。そんな頃です。
両親が家を建てた後なのですが、異常な事が続いていました。
家が建った3ヶ月後には、父方の祖父が風邪をこじらせ亡くなりました。
両親も何かがおかしいと思ったのか、家に霊媒師がやってきて、屋祓いをしたことがありました。
高校3年の秋。部活を終え家に帰ると、何やら音がしていました。音のする方に行ってみると、地下水をくみ上げるポンプから、ドオーと、水が吹き上がっていたのです。
ばっ!どぎゃんなっとると!?(熊本弁です)
慌ててポンプの電源を切らないと!と考え、裏庭の方に向かうと、何かを感じました。
奧の林の方に視線をやると、そこに、慰霊碑らしきものがあったのです。
ぞっとすると同時に、寒気が襲ってきましたが、とにかく電源をと、その時はその慰霊碑よりも、電源を切る事にいっぱいいっぱいでした。
その日の夜。たぶん10時頃でした。
リビングにいると、猛烈な睡魔に襲われ、いつの間にか寝てしまっていました。
その時の夢は余りにもリアルな出来事だったので、今でも鮮明に覚えています。
私は暗い場所に立って居て、遠くに小さな光が見えていました。その光を目指して全速力で走って行くのですが、その光に段々と近づくにつれ、その光の正体が見えてきたのです。
なんと、あの慰霊碑だったのです。
怖くなり、急いでその場を離れようと振り返ると、そこには落ち武者らしき影。刀をかざし、いきなり斬りつけてきたのです。
そこで、目が覚めました。
身体中から汗が吹き出し、割れるように頭が痛かったのです。
また別の日の事です。
家で音楽を聴いて居た時にCDプレーヤーから歌手とは違う低音の効いた野太い声が聞こえてきたのです。他の家族が居れば、誰かかもしれませんでしたが、その時は私ひとりだったのです。
「え?これはまさか、怪音?」
当時、レベッカのフレンズと言う曲に怪音が入ってるというのが流行っていて、私も見つけた!とちょっと喜んでいたかもしれません。しかし何度、巻き戻しても再生しても何も聞こえなかったのです。
空耳かな?と思っていると曲が終わり、次の曲に入る前に
「ゔぅ~、ゔぅぅ」
と男性の呻き声が聞こえたのです!
ぎゃー!という声を出してしまう事は、ありませんでした。
が、私はCDプレーヤーを止め、静寂の中、耳を澄ませました。もしかしたら外からかもしれない。すると本当に、壁の外から聞こえてきたのです。
ゔぅ~ゔぅぅ
急いで部屋の電気を付け、耳にティシュを丸めて入れ目を閉じました。結局何も起こらなかったのですが、3時、4時頃まで眠れず、明け方に少し寝た程度でした。
学校へ行き、早く眠れる日は、落ち武者に斬りつけられそうな夢で目が覚める。
そんな日々が半年程続き、夢と現実の区別が付かなくなった頃、両親が離婚してしまいました。
いつしか、家は他人の手に渡っていました。
私自身もなんだか上手くいきませんでした。高校を卒業し職につく事は出来ましたが、新しい家になってもなんだか寝付きが悪く、会社に宿泊したり、車で寝泊まりする日々でした。
幸い、落ち武者の夢は見なくなり、呻き声も聞く事はありませんでした。あれは、疲れのせい、気のせいだと思う事であの日々の事を忘れようとしていたのかもしれません。
あのまま、あの家に住んでいたらと思うと、ぞっとします。
私はどうなっていたのでしょうね。
時見