3階のベランダから
顔を出すと
下の道を歩いてる人が見える

 

その人はいつも歩いてる


雨の日も風の日も
暑くても寒くても


ほんの数十メートルの距離を
行ったり来たりしてる

 

時折どうやら顔見知りらしき人と
挨拶を交わしたりしてる

 

でも時折
息子らしき人に
叱るような声で何か言われて
連れていかれることもある

 

それでもまた次の日になると
その人は歩いてる

 

どこかに行くわけではなく
誰かを探してるわけでもなく

 

ただ時折
立ち止まって
遠くを見るようなそぶりをしてる


何かを待ってるようでもある

 

ベランダから見える
小さなドラマ

 

ちっとも特別なことじゃない
わたしたちみんなの物語


愛おしくて
切なくて
行って抱きしめたくなる