愛すべきオノマトペ
あべせつ
例えば、関西で通行人に道を尋ねてみる。
「ああ、ここやったら、この道をこのままビィヤーッと行って、コンビニの角をカッと曲がって、チョイのとこですわ」と、だいたいこんな具合に教えてくれるはずである。
「おおきに、ありがとうございました」とニッコリ笑って返礼し、ガタガタと車を発進させた私に、関東人であるシュッとした男前の旦那が「えっ、今の説明でわかったの?」と驚いている。
「うん、この道を真っすぐ行って、信号三つ目ぐらいにあるコンビニを左折、その先五十メートルほど行った所らしいわ」
「ええっ? どこにそんな言葉があったの?」とまあ擬音語だらけの会話に、関西以外の方々は面食らうことが多いらしい。
ただ、この擬音語を大層喜んでくださるのが、お医者様なのだそうだ。患者に症状を問うたとき、ただ痛いと言うよりも、
「そりゃもう、先生、グワングワン言うて、頭ん中でお寺の鐘ついてるみたいですねん」とか、「ギシギシ、ギシギシ、ひざから油切れみたいな音がしよりますねん」との表現により、診断が付きやすいのだそうだ。
現在、こうしたキリキリやガンガン、ピリピリなどといった痛みの擬音語をメディカル・オノマトペとして研究が進んでいるらしい。
短い言葉で相手にチャチャッと気持ちや雰囲気や状態が的確に伝えられるのは、擬音語の強みだなと思うのである。