源氏物語イラスト訳【紅葉賀175】かかる折
「かかる折に、すこし脅しきこえて、御心まどはして、懲りぬやと言はむ」と思ひて、たゆめきこゆ。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。
源氏物語イラスト訳
「かかる折に、すこし脅しきこえて、
訳)「このような機会に、少し脅かし申し上げて、
御心まどはして、懲りぬやと言はむ」と思ひて、
訳)お心を惑わして、これに懲りたか、と言ってやろう」と思って、
たゆめきこゆ。
訳)油断させ申し上げる。
【古文】
「かかる折に、すこし脅しきこえて、御心まどはして、懲りぬやと言はむ」と思ひて、たゆめきこゆ。
【訳】
「このような機会に、少し脅かし申し上げて、お心を惑わして、これに懲りたか、と言ってやろう」と思って、油断させ申し上げる。
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■【かかる】…このような
■【折(をり)】…機会。時
■【に】…時の格助詞
■【脅(おど)す】…こわがらせる。脅かす
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(頭中将⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(頭中将⇒光源氏)
■【まどはす】…乱れさせる。迷わせる。悩ませる。動揺させる
■【て】…単純接続の接続助詞
■【懲(こ)り】…ラ行上二段動詞「懲る」連用形
※【懲(こ)る】…懲りる
■【ぬ】…完了の助動詞「ぬ」終止形
■【や】…疑問の係助詞(文末用法)
■【と】…引用の格助詞
■【言は】…ハ行四段動詞「いふ」未然形
■【む】…意志の助動詞「む」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【たゆめ】…マ行下二段動詞「弛む」連用形
※【たゆむ】…気をゆるめさせる。油断させる
■【きこゆ】…謙譲の補助動詞(作者⇒光源氏)
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源氏物語のなかには、
今回のようなライバル関係が、たくさん出てきます。
光源氏 VS 頭中将
夕霧 VS 柏木
薫 VS 匂宮
これは、まさにドラゴンボールの、
孫悟空(幼) VS クリリン
孫悟空(大人) VS ベジータ
孫悟飯 VS トランクス
(タイムスリップしてきた)
孫悟天 VS トランクス
という設定と、非常に似通っている気がします。
頭中将は、光源氏のライバル関係です。
左大臣の息子であり、サラブレッドなのに、
いつも源氏と引き比べられて…
頭中将は、陽キャラで、軽薄なプレイボーイなんですけど、そのことを光源氏から、事あるごとにたしなめられたりして…、
何か光源氏に欠点が見えたら、
揚げ足をとってやろう
と、常に思っていたようですね。
「たゆむ」というのは、「弛む」と書きます。
源氏に、自分が虎視眈々とねらっていることを悟られてはいけないと思い、何も気づかないふりをしている頭中将のようすが、この形容詞によくあらわれていますねー!
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