「翔やん、大丈夫?」
「サク、どしたの?」
社食で目の前に座った二宮と松本が俺の顔を見て同時に口を開いた。
「……どうもしねぇよ」
鴨南蛮を前にため息をついた。
何も答えない俺をちらりとみて、松本が口を開く。
「サクは明後日、何時に行くの?」
「相葉くんのショーは10時からって書いてあったよね?」
「あー、そう。10時から……」
明後日は雅紀の学校の学祭で、昨日も何回も大野くんの絵をちゃんと見てくれって雅紀が言ってたな。
大野くんの絵に何があるんだろ。
黙り込んでため息をついた俺を松本が心配そうに覗き込む。
「サク、マジで大丈夫?」
「や、昨日ちょっと……あんまり寝れなかっただけ」
雅紀と同じ布団で寝れるわけないっての。
またデカイため息をついた俺に、2人が苦笑する。
「翔やんはいろいろ、考えすぎなんだと思うけど」
「聞いて欲しくなったらいつでも聞くよ」
二宮が笑って、松本がかっこよくウインクを決めたから、通りかかった女性社員が小さな悲鳴をあげた。
あの日、海に行ったのはこの3人なのに。
なんで俺だったんだろう……
「やっぱり、影山さんいいよな!美人だしスタイルもいいし」
「潤くんがその気になったら、おとせるんじゃないの?」
「かずこそ、この間、横山さんと仲良さげに話してただろ?」
松本みたいにオシャレで気が利いてるわけでもなくて、二宮みたいに周りをよく見てて、心遣いができるとか、そんなこともできないし……
松本と二宮の話を聞き流しながら、鴨南蛮を啜って、考える。
俺と目が合った二宮が、ふふって笑う。
「翔やんはさ、色々難しく考えすぎなんだよ。まぁ、そういう所が翔やんらしいっちゃ、らしいんだけどさ……」
「俺らしいって、なんだよ」
「石橋を叩いて叩いて、叩きまくるタイプでしょ?
潤くんはよーく観察して、とりあえず渡ってみるタイプ、俺はシミュレーションして、叩きながら渡るタイプ」
そこで一旦言葉を切って……
「叩きすぎて壊さないようにね?」
真面目な顔でそう言うから、蕎麦を慌てて飲み込んで首を縦に振った。