「サク、どしたの?」
「なんか最近、また張り切ってんだよね、翔やん」
昼メシ行こうぜって声をかけられたけど、ちょっと待ってって言ったまま、キーボードを打ち続ける俺を、松本と二宮が並んで眺める。
「おし、出来た」
ファイルを保存して立ち上がる。
「なぁ、なんかいい事あった?」
松本が歩きながら俺の方を見て笑う。
「いや、別に?」
「そ?なんかいい顔してんだけどな」
「クリスマスの予定、埋まったんじゃないの?」
二宮が松本の向こう側からにやにや、笑いながら言う。
「お前らこそ、クリスマスの予定、埋まったのかよ」
「俺はあれだよ、仕事。学生集めてやるプロジェクトの本番」
「俺は野暮用」
野暮用ってなんだよ!って、二宮に松本と同時に突っ込んだ。
「知り合いのパーティーに呼ばれてんの」
「ぱ……」
松本がそう言いかけて吹き出した。
「何よ、潤くん」
「や、だって……かずがパーティーとか、似合わなくね?」
「そんなの、俺だってそう思ってるよ!」
耳まで赤くなった二宮に、松本が眉毛を片方上げた。
「さては、上手くいったな?」
「だからもう、うるさいんだよ、潤くんは!」
「良かったじゃん」
松本が二宮の髪の毛をぐしゃぐしゃかき混ぜて笑う。
「ちょ!やめてよ!」
口を尖らせた二宮が手で髪の毛を直して、俺を見上げた。
「で?翔やんは?まだ橋叩いてんの?」
「るせ。てか、上手くいったってなんだよ」
「俺にも色々あんの。ま、そのうち分かるよ、翔やんにも」
俺達の真ん中であーあー!って、松本が声を上げて伸びをした。
「俺だけかー、クリぼっちは!」
「くり……ぼっち?」
「ちょっと潤くんさぁ、最近若い子といるからって、変な言葉使うのやめてくんない?」
「いや、だっておもしれぇんだよ?あいつらと話してるとさ……」
エントランスホールに着いたところで、松本が小さな人影に気がついて、あって声を漏らした。
「わり、俺抜けるわ」
そう言って、颯爽と走り去る後ろ姿を、二宮と見送ってから目を合わせて笑った。