これは日本にとって、非常に重大なニュースである。

現在、世界の成長拠点は

(1)中国
(2)中南米
(3)インド

である。日本がここ二十年ほど、ガタガタになりながらなんとか成長を続けてきたのは、中国のとなりにいたからである。本当はもっと繁栄できたはずであるのに、余計なアメリカへのゴマすりや小泉政権の靖国参拝などを続けたために、わずかの果実しか得られなかった。そうこうしているうちに、中国の超高度成長も終焉を迎えつつある。その上、中国は莫大な留学生を欧米に送って十分に人材を養成したので、今後は日本に依存する必要などほとんどない。日本が濡れ手に粟の利益を中国の成長から獲得するチャンスは去ったというべきであろう。今後はより洗練された主体的戦略を必要とするのだが、原発事故で痛い目にあいながら、原発などという時代遅れの技術に活路を見出そうとしているような今の日本の政治家・財界人に、それを期待するのは無理というものである。

そういうわけで成長拠点は中国から中南米に移行しつつある。今度はアメリカの裏庭である。しかも前に書いたように、アメリカの選挙民のラテン系比率が急激に上昇している。そういう条件から考えて、アメリカは中南米に擦り寄る以外に進む道はない。

しかし大嫌いなベネズエラのチャベス大統領が主導する「中南米共同体」に、膝を屈して入れてもらうのは悔しくてたまらない。アメリカがTPPなどという茶番を開始したのは、「中南米共同体」へのバーゲニング為だったのだと考えればよくわかる。TPPをチラつかせて、「私を排斥するなら、アジア太平洋の方に行っちゃうよ」と言って、体裁良く「ぜひアメリカさんもお入りください」と言ってもらおう、というのであろう。つまりTPPはアテ馬なのである。

ということは、日本が採るべき戦略は明らかである。中南米共同体に接近するのである。あちらには幸いにも多数の日系人がいるのだから、そのコネクションをフル稼働させて、中南米共同体を支援すれば良い。日本のイメージは一般に悪くないので、彼らは歓迎するだろう。そうするとそれは、アメリカに対する強力なバーゲニングパワーを日本に与える。その上、中国も大いに気になるだろう。

そのあとはインドであるが、インドは中国との対立関係が深刻なので、日本に期待している。ここに新しい成長理念を持ち込んで、日本の役割を発揮することが、生き延びる道である。

こういった道は、原発にこだわっている限り、不可能である。


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「中南米共同体」が誕生=域内33カ国、米国離れ象徴
2011年12月3日8時6分

 【サンパウロ時事】メキシコ以南のすべての中南米諸国33カ国は2日、ベネズエラのカラカスで首脳会合を開き、33カ国でつくる「中南米カリブ海諸国共同体」(CELAC)を正式に発足させた。長らく「米国の裏庭」とやゆされた中南米で、米国を除く新たな地域機構が設立されたことで、米国の域内での求心力は一層低下しそうだ。

 米州には米国やカナダ、中南米の計35カ国が加盟する米州機構(OAS)があるが、米国の影響力が強大で、「中南米支配」の象徴とみられていた。中南米各国では反米左派政権が台頭し、経済発展などで自信を深める中、対米依存からの脱却を目指す新しい枠組みを求める声が強まっていた。 

[時事通信社]