母親の呪縛の構造とストーリーとの関係を検討してみよう。

まず希衣は、

(4)自分は無理やりトマトを食べさせられそうになり、お母さんなんか死んじゃえ、と言ったら、本当に死んじゃったと思って後悔している。(希衣)

という最悪の呪縛に掛かっている。これは第1話のストーリーの主題であり、このために希衣は自殺をはかり、ミタさんと共に川に入る。翔が飛び込んできて事無きを得る。これが、

子どもの誰かが母親の掛けた呪縛に苦悩する
→錯乱状態になって業務命令を出す
→ミタさんが「承知しました」といってその命令を文字通りに実行する


の部分である。第一話はここからスムーズに話が展開せず、翔がいくら「あの家政婦ヤバイよ」と言っても、誰も相手にしないので、一旦、収束する。

そこでうららが現れて、希衣の誕生日にハチャメチャなことをやらかして大混乱を招く。そこで結が、母親の形見を燃やせ、という業務命令を出す。ここから、さきほど一旦停止したプロセスが再稼働して、

子どもの誰かが母親の掛けた呪縛に苦悩する
→錯乱状態になって業務命令を出す
→ミタさんが「承知しました」といってその命令を文字通りに実行する


に入り、そのまま一気呵成に、

→破壊的な事態になって大騒ぎになる
→大騒ぎによって隠蔽されていた事実が明らかになる
→子どもたちの呪縛がすこし解ける
→みんながミタさんに感謝する


までが作動する。第一話はここまでであって、

→ミタさんの心が動く
→死んだ夫と息子との幻影が現れる
→ミタさんが動揺する
→子どもたちが助けに来る
→ミタさんの呪縛が少し解ける


は表現されていないが、「形見を焼く」という行為がミタさんの心に何らかの衝撃があったに違いないのである。

========第一話のストーリー=========

 三田灯(松嶋菜々子)は、頼まれた仕事は“何でも”完璧に遂行するスーパー家政婦。
しかし、彼女は笑ったり、こびたりすることがなく、常に無表情で全く感情が読み取れない。
そんな彼女が派遣されたのが、阿須田家。家長の恵一(長谷川博己)は、妻の凪子(大家由祐子)を事故で亡くしたばかり。4人の子供・結(忽那汐里)、翔(中川大志)、海斗(綾部守人)、希衣(本田望結)は母の死に大きなショックを受け、家族の心はバラバラ。家の中も荒れ放題だった。
三田は、そんな家を見違えるように綺麗に片付ける。ゴキブリが出てくればつかんで窓から捨て、海斗が解けないで困っている算数の問題にスラスラと答え、料理も上手な三田。その仕事ぶりに、阿須田家の人々は驚く。

そんな中、凪子の妹・うらら(相武紗季)が阿須田家を訪れる。うららは、2日後の希衣の誕生日にパーティーを開こうと提案。プレゼントは何がいいかと聞かれた希衣は「お母さんに会いたい」と答える。そんな希衣にうららは「お母さんに会わせてあげる」と引き受けてしまう。
喜んだ希衣だが、幼稚園の友達から「死んだ人には会えないよ、お母さんは天国にいるから、会いたいなら死ぬしかないんだよ」と言われて落ち込む。
そして、幼稚園の帰り道、母が溺れて亡くなった川を通った際、希衣は三田に「一緒にお母さんに会いに行って」と頼む。そんな希衣の言葉に、三田がとった行動は…。

(つづく)