息抜きに一つ短編を作ってみたくなりました。




黒い魔犬の耳・尻尾



敦賀 蓮扮するカイン・ヒールと、京子扮する雪花・ヒールが撮影現場に参加するようになって数日。
もちろん監督以外、誰もその正体を知る者はいない。
これはそんな現場で、スタッフが休憩時間に交わした会話の一部である。



「お疲れ~。」

「なぁ…、俺さぁ、今回の現場、すっげえ疲れる…。」

「お前だけじゃないよ。
見ろ、うちの撮影組の連中の有様を。
撮影が終わる度にもう疲労困憊、死屍累々ってな有様だぞ?」

「…何者なんだよ、あいつ。
確かに監督が推すだけの事はあると思うし、“B・J”はああいう男だって思えるよ。
だけど仕事以外は変なプレッシャーかけないで欲しいよなぁ…。」

「何かあったのか?」

「あいつの妹ちゃんだよ。
セツカちゃん…だっけ?」

「ブラコンだけど、可愛いよな、あの娘。
見た目と違って凄く気が利く娘だよ。」

「そ。
んで撮影中ってあの娘あいつの付き人だから暇じゃん。
少し話してたらカットが掛かった途端にいつの間にか彼女の後ろに居てさ、恐いよ!
番犬だね、あれは。」

「番犬っていうより魔犬じゃね~?
黒い魔犬だよ。」

「言えてる~。(笑)」

「あ、だけどその魔犬、さっき面白いとこ見ちゃった。」

「なになに?」

「セツカちゃんがさ、休憩時間に軽食用意してたらしくて、控室に連れて行こうとしたら、あの図体で駄々こねてた。」

「………マジ?」

「しかもその後怒られて。
魔犬に尻尾と耳があったら確実に垂れ下がりだね。」

「セツカちゃん、すげえ…。」

「あの魔犬、手なずけてるだけでも凄いけど、躾てるのか…。」

「しかもその後、ちゃんとしょげた魔犬を宥めすかして控室に連れてった。」

「ますますすげえ…。」

「笑えるのはその時の魔犬だよ。
たちまち機嫌直して、引っ張られるようにして歩いてったんだけど、顔が緩んでて、あれ、尻尾があったらすげえ勢いでぶんぶん振ってたね。」

「つくづくすげえよ、セツカちゃん…。」

「あの魔犬を兄貴に持ってて、しかもブラコンだしよ。」

「あの娘、可愛いけどあの魔犬が傍にいたら絶対彼氏できないな…。」

「終いにゃあぶない関係になりそうだな、あの2人。」

「触らぬ魔犬に祟りなし、だよ。」

「さぁ、休憩時間もぼちぼち終わりだ。
今日もあと一息、頑張ろうぜ。」

かくして撮影スタッフの若者たちは黒いオーラに包まれたスタジオに戻って行った……。







何人かの若手スタッフの会話、って感じで書いてみました。
かいんまるの尻尾と耳、キョーコちゃんにしか見えなくても、雰囲気は周りにも伝わりそうな気がしたのです。