「きょ、京子ちゃん?
あんた敦賀さんにご飯なんか作ってやる仲なんか?
一体いつからやねんな?」

唖然としながらも、辛うじて司会として進行の使命を忘れなかった松田は、敢えてその部分に切り込んだ。

「きっかけはデビュー前の代マネなんですけど、今は毎日、朝晩お弁当も作ってます♪」

外しようのない爆弾発言に、進行役の二人ももはや収拾のつけようがない。
折しも収録時間の終了時間が迫ってしまっていたので、もうこれはさっさと番組自体を締めくくった方がいいと判断したディレクターの指示を受け、司会の二人は締めくくりにかかった。

「いや~!
とんでもない爆弾発言がぶっ飛んで、盛り上がった今夜のデラ☆ックス!
さすがにこれ以上はもうないやろ~!」

浜本の締めくくりに、すみませ~ん、と今日最大の爆弾発言をかました人気タレントが、トドメの一発を放った。

「な、何やねん!?
まだ何かあんの!?」

不憫な司会者の片割れが顔を引き攣らせる。

「この場をお借りしまして、ご報告します!
不肖、わたくし京子はかねてからお付き合いをしておりました、事務所の先輩でもあります敦賀 蓮さんから、先週プロポーズされまして、これをお受けしました!
結婚しましても仕事は続けていくつもりですので、これからもよろしくお願いします!」

どっかーん!!
本日最大の爆弾発言をぶちかまされた収録スタジオに、後には真っ白な灰になった本日の共演者と憐れな司会者コンビの姿があった…。



収録も済んで、今日はもう仕事がないキョーコは言いたい事を思い切り言った開放感から軽い足取りで楽屋を後にした。
しかしマスコミの情報伝達速度の凄まじさは半端なものではなく、キョーコはロビーに出たところでマネージャーと共に物凄い報道陣に取り囲まれる事となった。


「京子さん!
敦賀 蓮さんと婚約なさったとの情報が流れてますが本当ですか!?」

「プロポーズの言葉は何と!?」

「若いお二方にありがちなおめでたではありませんか!?」

「挙式、披露宴のご予定はいつ頃ですか!?」

血走った恐ろしい、血に飢えたハイエナのような報道陣の目に怯えてしまい、声も出せなくなってしまったキョーコを、甘いテノールボイスの持ち主が救い出してくれた。

「皆さん、落ち着いて下さい。
彼女を怯えさせないで。
…お待たせ、キョーコ。」

「~っ、蓮…さん!?」

「収録の終わる時間に合わせて、社さんにスケジュールを調整して貰ったんだ。
揉みくちゃにされる前に会えて良かった。」

「うれしい…。
助けに来て欲しいと思った時にいてくれるのって、こんなにうれしいのね。」

「言っただろう?
どんな事があったって、俺は全力で君を護るよ。」

「蓮さん…。」


すっかり二人の世界に入ってしまったラブラブカップルに、殺気立っていた報道陣も4 tトラックで砂糖の山に埋められた気分になっていた。
すかさず京子のマネージャーと社は後日改めて記者会見するから、と報道陣を散らしたのだった。



数日の後、数百人にもなる報道陣を前に、砂糖に蜂蜜をかけた山盛りのスプーンを口に突っ込まれたような甘~い雰囲気で婚約会見をする二人に、京子に想いを寄せていた面々がTVの前で灰になっていたのは言うまでもない…。






蓮さんプロポーズ編は後日。