毎度お馴染みの褐色の肌の執事、セバスチャン(仮)に案内されて、ローリィ宝田邸の長い廊下を歩きながら社は小さな声で蓮にお説教していた。


「…お前形振り構わないにも程があるだろう?
何で選りに選って社長に助力を乞うんだよ…。
あの人は全力で面白がる人だぞ?
とばっちりがどこに行くかわかったもんじゃない!!」


「…分かってますよ。
ちょっと冷静になれば解る事ですから。
気が急いていたとはいえ、軽率だったかなと思ってますから。」


でも後悔したくないんです、と案内されたドアを開けると、広々とした応接間に既に5人の人間が顔を揃えていた。


「おう、来たな。
関係者で業界人は集めたぞ。
今必要なものはあるのか?」


「お手数おかけします。
テレビとDVDの再生機器を用意して頂きたいんですけど、お願いします。

お忙しいのに集まって頂いて済みません、皆さん。」


ぺこりと頭を下げた先に居たのは、社長、ローリィ宝田を筆頭に、俳優部主任・松島、タレント部主任の椹、ラブミー部員2号の女優・琴南奏江と同じくラブミー部員3号でソフトハット所属の女優、天宮千織の計5人。


「…敦賀さん、彼女…天宮さんは私以外じゃ社長さんにしか面識無かったんで、お互い自己紹介は済ませましたけど…間違いなくあの子絡みの招集ですね?
全く…無茶な招集かけないで下さいよ。
半ば拉致でしたよ?」


ぶつぶつと俳優の先輩に文句を垂れる後輩女優。

奇妙な画面(えづら)であった。


「ごめんね、琴南さん。
  …君とは初対面だったよね。
初めまして、敦賀 蓮です。」


「…ソフトハット所属のラブミー部員、天宮 千織です。
京子さんには“BOX-R”でお世話になってます。」

立ち上がって一礼した千織に、蓮もまた礼を返した。

「…で、いい加減呼び立てた理由をお聞かせ願えませんか?」


座り直した千織は、一同の気持ちを代弁する様に口を開いた。


蓮はそんな千織に頷き、運ばれて来た再生機器にDVDをセットした。


「…これは最上さんが2ヶ月海外ロケに行った甲斐なくお蔵入りになった番組のダイジェスト版なんです。
椹さんからお借りしました。」


「「「はぁ!?」」」


椹と社、それに社長と蓮を除く3人は自分の耳を疑った。


「全部見ると長くなりますので、最終的にどうなったかだけ見て下さい。
そこまでの事情は…。」


「待て蓮。それは椹の仕事の部類だ。
椹、話してやってくれや。」


ローリィに促され、納得いかないまでも一番事情通なのは自分だと分かっていたので、椹は躊躇う事はしなかった。





「…という訳で、最上くんの2ヶ月に及ぶ海外ロケは全部お蔵入りとなったんです。
何で蓮が焦って我々を呼び出したのかはともかく、最終的な状態はどこも同じようなものだったと認識した上で映像を見たら納得頂けるかと思いますよ。」


椹はそう締め括り、DVDを再生するように蓮に合図した。



…見終わった後で蓮が同席した全員の顔を見渡すと、事情を知っていた自分と椹、社を除く4人の反応は見事に真っ二つだった。


『なんじゃこりゃ!!』と言わんばかりに開いた口が塞がらない松島主任と千織、そして『成る程なぁ…』と納得いったとばかりに額に手を当てため息を吐く社長と奏江であった。











…長いくせに話が進んでないなぁ。←コラッ