「…ヘタレ…?
あの敦賀さんがそんな事有り得ないわよ…。」


キョーコが否定しても、ラブミー部仲間の2人はキッパリ言い切った。


「「どこからどう見てもただのダメダメヘタレ男よ、あの人は。」」


…しかもハモって。


「…君たち、本気でヘコむから蓮を苛めないでやってよ。」


やっとスケジュールを空けられたらしい蓮と共にやって来た社が苦笑いしながら奏江と千織を止める。

ヘタレ男の烙印をしっかり捺された蓮だが、ヘコんでいられない状況が遂に来たと腹を括ったらしく、キョーコの周りをガードする奏江と千織、マリアへの挨拶もそこそこにラスボス・キョーコの腕を掴んで自分の腕の中に引き寄せて抱き込んだ。


「~~~へぁっっ!?
つ、つ、つ、敦賀さぁん!?
ななな何を…!!?」


「…君が好きだ。
他の誰でもない、最上 キョーコさん、君を愛してる。
“女優でタレントの京子”はみんなのものだけれど、ただの“最上 キョーコ”は俺だけの女(ヒト)になってくれないか?」


「あああ、あいぃ~!?」


「そう、君を愛してるよ。」


「じょじょじょ…。」


「冗談なんかじゃない。」


「か、か、か、からからから…。」


「からかってもいないから。」


「…う…。」「こんな嘘つくと思っているの、君は?」


「え…。」「演技する必要無いでしょ?」


真横で2人のやり取りを聞いていた奏江達は呆れ顔になっていた。


「…あの子、一文字か二文字しか喋ってないけど、ちゃんと会話になってるのね。」


「…ある意味見事だわ…。」


「頑張って粘り倒せよ~、蓮。」


「お姉さまなら蓮さまに相応しいですわっ!!
いいえ、お姉さまに相応しい殿方など蓮さまの他に居る筈などありませんわっ!!」


そんな外野を後目(しりめ)に2人の掛け合いは続く。



「…君は…俺が嫌い?」


「そっ、そんな事あり得ません!!」


「こうして俺の腕の中に居てくれるけど…厭じゃない?」


「……い…厭じゃない…です…。」


「…じゃあ少し考えてみて?
俺としては嫌だけど、プライベートで君を抱き締めているのが俺以外の男だったら?」


嫌な喩え話に、頬を愛らしく赤く染め自分を潤んだ瞳で見上げていた最愛の少女の顔から、一気に血の気が退け、嫌悪の表情が浮かぶのを蓮は確かに見届けた。


「…絶対に…厭です…。
敦賀さん以外の人じゃ…厭…。」


俯いたキョーコの表情を窺い知る事は出来なかったが、一方的に蓮が抱き締めていた状況がおずおずとキョーコの手が上がり、蓮の背に手を回した事で決定的になった。


押し問答になっていた海外からの求婚者達も、そんなキョーコの仕種と蓮の破願と、蓮の腕の中で幸せそうなキューティーハニースマイルを浮かべるキョーコを目撃したのでは何も言うことも出来ず、悔し涙を浮かべる者や泣き叫ぶ者、がっくりと肩を落とし項垂れる者等々…。


ほぼ死屍累々という有り様の中、動きを見せた者達がいた。







長くなりましたがここで一旦切ります。