私の自爆しまくった妄想も早くも1年。

皆様のご愛顧に感謝、という訳で始まりました1周年企画!


だらだら物書きの私にリクを下さった強者、ありす様からのネタです…が、ほぼ内容が被った朱烙様からのリクも合同とさせて頂きます。←すみません、ありす様、朱烙様。


それでは↓からどうぞ♪










それはキョーコが二十歳を迎え、堂々とお酒を呑める歳になって間もなくの事。

年も改まり、新年早々仕事を詰め込む様な事はしたくないというマネージャーの温情を持って、常ならば日を跨いでまでも続く仕事が日が沈んだばかりという時間で終了した蓮は、予め約束していた通りに事務所で変装し、キョーコのアルコールデビューをお祝いしようと待ち構えていた。


キョーコの方も前々から楽しみにしていたこともあり、気合いの入った大人美人の出で立ちで蓮の前に立ち。


そうして忘れられない夜が始まろうとしていた。



「…お洒落なお店ね。」


「俳優の中では知られたお店なんだ。
以前お世話になった人に紹介して貰ったんだよ。 [恋人と行くなら絶対オススメだ]って言われてたから、君と初めてお酒を飲むなら此処って決めてたんだ。」


その人も奥さんとの初デート此処だったんだって、とウインクされて、キョーコは頬を染めてはにかんだ。
案内された席は店の中央からやや奥。

俳優や歌手、プロデューサーに監督等業界の人間も頻繁に訪れるこの店では、一般人は入り口近く、業界人は奥に案内されるのが暗黙のルールになっていた。

以前大騒ぎした客がいた事で、2度と店の品格を落とす事が無いようにとの配慮が為された結果だった。


「…それじゃ、キョーコの成人を祝って、乾杯。」


「ん~、たまには一緒に飲みに来られる事を祈って、乾杯?」


クスクス笑いながら蓮はブランデーのロック、キョーコは口当たりのいい柑橘系のカクテルグラスを持ち上げ、小さくカチンと打ち合わせた。



「美味しい~。
あ、これどうやって作るのかなぁ。
今度家で飲む時のおつまみに作ってみたいなぁ~♪
れ…久遠さんのって美味しいの?
ちょっと味見させて?」


「こらこら、いくら口当たりがいいからってペースが早すぎるよ?
あ、ちょっとダメだよ。
君にはまだ強すぎるって。」


今まで一度も口にしたことのないアルコールなだけに、限度も飲み方も知らないキョーコは、初めて知る大人の世界にも酔っていた。

蓮もキョーコの嬉しそうな顔につられて自然に顔が綻ぶが、やがてそれも困惑へと変わった。

酒酔いには個人差がある。
日頃おとなしい人が酒乱だったり、男らしいと評判の人が泣き上戸だったり。

キョーコはどうやら甘えた絡み上戸らしい。

変装してナツとはまた違う印象の大人美人になった上に、酔って上気した顔で上目遣いの潤んだ瞳で見つめられて、心臓がばくばくいって仕方がない。


〈これはもうお持ち帰りコース決定だろう!?
本当に今ここに誰も居なければ…!!〉


見る人が見たら間違いなく蓮に狼の耳と尻尾が生えている気配を醸し出していた。


そんな2人を遠巻きに見ている男がいた。

同じ様に獲物を狙う狼の目をした男が。



楽しく飲んでいた時間を中断する出来事は突然やって来た。

時間を確認しようと携帯を取り出した蓮が、何度も連絡を取ろうとしたらしい社からの着信履歴に気付いたからだった。


ふわふわ夢心地のキョーコにすぐ戻ると言い置いて、店の者にも一声掛けて蓮は席を離れた。


そのチャンスを男が見逃すはずは無かった。



「…なぁ、あんた。
俺からご馳走させてくれないか?」


聞いたことのあるような声に顔を上げたキョーコの目線の先に、自分が一度も見た事のない様な笑みを浮かべたかつての幼なじみが立っていた。


〈…何よ、このバカもしかして気付いてない?〉


その下心丸出しの笑顔に多少酔いが醒めたものの頭と身体は別物で、判断力は落ちているし思考能力も格段に落ちている。

だからなのだろうが、今更どうでもいいこの男をキョーコはからかってみたくなった。


「…あら、貴方彼女は?
こういうところに一人で来たとは思えないけど…。」


艶めいた笑みを浮かべてチラリと元幼なじみ…不破 尚を見遣ると、尚は気を良くしたのか図々しくも隣に座り込んだ。