アメンバー500人突破記念リクエスト作品です。



リクネタは雪兎さまから頂戴致しました♪



下さいましたネタは詳細なのでどんなのかはヒミツで♪m(__)m


っつー訳で行ってみましょう!!









想いを歌声に乗せて(1)

---始まりは女神[ディーヴァ]の子守唄---




《Mr.タカラダ!!
お願いします、彼女の声は私が思い描いた理想そのものです!!
クーの新作映画の主題歌を是非とも彼女に唄って貰いたいんです!!》



契約書を最重要視する筈のアメリカショービジネスの世界に身を置く者にはあり得ない程の腰の低さでペコペコと頭を下げる赤茶の髪の白人男性が、芸能事務所LMEの社長、ローリィ宝田の前にいた。



《……まぁ事情を訊かせてくれねぇとYESもNOもねぇんだが?
今の言葉から拾うに、君はアイツの…クーの映画の関係者で良いんだな?》


そう言われて初めて自分が自己紹介もしていなかった事に気付いた男は慌ててスーツの内ポケットから名刺入れを取り出し一枚の名刺を差し出した。



《…大変失礼しました。
理想の声に出会えた喜びに浮き足立ってしまいました。》



《……で?
詳しく話してくれや。
当人達も困ってるんでな。》



名刺に書かれていた名前を眺めながらローリィが親指で示した先には、明らかにふてくされた表情の金髪ピンクメッシュの美少女と黒づくめのがっしりした肢体の殺気満々な男が、赤茶の髪の男を睨み据えながらソファーに腰掛けていた。



《…はい、おっしゃる通り私は新作のクー・ヒズリ主演映画のクルーの一人でジム・オラクルといいます。
もう撮影も済んで今は編集作業の真っ最中なんですが…実は主題歌の歌手が未だに決まっていないんです。》



《…その話なら確かだいぶ前にウチからは松内瑠璃子を推したんだがな。》



《はい、勿論存じています。
  有数のアーティストをそちらのLMEを筆頭に各事務所とも推薦してくれました。
そちらのルリコ・マツナイを始め、アカトキエージェンシーからはショウ・フワ、グループならビー・グール等々メジャーな歌手は一通り…。
  勿論アメリカ国内でも探してはみたのですが…。》



《…その何れもが監督のメガネに叶わなかったというわけか。》



《…監督命令でイメージに合う歌声の歌手を探すべく、監督の意を受けたクルーが世界各国に散り、そのうちの一人である私が日本に。
  そして漸く彼女に出会えたという訳なんです。》



本当に偶然だったと、まさに神の思し召しだと恍惚の表情を浮かべた。


…もっとも美青年ならともかく、腹回りが残念な体型の中年の脂ぎったおっさんが恍惚の表情を浮かべても気持ち悪いだけなので周囲は若干引きぎみだが。



《あちこちの伝手を頼りに音楽番組の収録スタジオやら撮影所やら飛び回って、それでもこれと言える声に巡り会えずにいたそんなある日!!
私は遂に彼女に出会えたのです!!
そちらの男性に膝を貸しながら囁くように優しく歌う子守唄に衝撃を受けました!!
出で立ちとはかけ離れた優しい歌声、それは懺悔を乞う憐れな子羊を赦したもう聖女の歌声!!
その時私は確信したのです!!
あの映画に相応しい歌い手は彼女しかいないと。
ですからお嬢さんっ、どうか首を縦に振って頂けませんか!?
貴女を見つけた以上、貴女以外の人は考えられないのです。》



「………。」



雪花に扮した京子は表向き仏頂面をしながらもチラリと社長であるローリィを窺い、黙ったまま横を向いていた。



《…それはアンタの独断専行じゃないのか?
世界各国に候補を求めてクルーが飛んでる、アジア担当の一人がアンタだというだけでセツしかいない、なんて話は通らないだろ。》



《その点については抜かりはありませんっ!!
初めてそちらのお嬢さんの歌声を聴いた時、身勝手とは思いましたが録音させて貰いました。
それを本国の監督始めメインキャスト、残留組のスタッフにもネット経由で聴いて貰い、彼女しかいないと意見が一致した上でお願いしているんです!!》



ですからと続けそうになったジムは少女の横から質問してきた大男…カインの殺気に満ちた眼に蒼白になったのだが。



《…落ち着けやカイン。
事情は解った。
ジム、クーに俺の方から直接問い合わせてみるから、暫く待ってくれ。
…そうだな、3日。
3日後、もう一度来てくれた時に返事をしようじゃないか。
なぁに、見つけたあんたの手柄をどうこうするつもりは無いが、俺もあっちとのコネを少しは持ってるからな。
ちっと話を纏めておくだけだ。》



とにかく今日のところはこれまでだと促され、ジムは心の底から残念そうに渋々帰っていった。



「………社長…。」



「…さて、どうするよ最上くん。」



「………どうしましょう。(´・ω・`)?」



社長室にはヒール兄妹の衣装を着た困惑しまくり顔の蓮とキョーコ、そしてローリィだけが残っていた。