英語悪文の翻訳例:『Dying Room Only』(1973)のTriviaから | There can be only one...

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『IMDb』内の、Philip Leacock監督作『Dying Room Only』(1973)の情報が登録されている。

 

 

その映画に関する無駄知識の項目に、英語の悪文が在ったので、此処で、それを採り上げる。

此処で言う【悪文】とは、誤字、脱字は無いが、文法違反や文法違反に等しい、修飾関係を持ち、素直な理解を阻む文の事である。
日本人が日本語の悪文を平然と組み立てる様に、英語に慣れた英語使用者も英語の悪文を組み立てるのは、普通の事である。

★悪い出来の英文:
This was made a year after Ned Beatty (as a tourist) was famously attacked by hillbillies in his first movie, Deliverance, and now he's a marauding redneck attacking tourists.
(https://www.imdb.com/title/tt0070012/trivia/?ref_=tt_trv_trv).

この文は、意味上の不合理な省略が無いにも拘らず、【famously】一語で、修飾関係を複雑なものに変えている。
合理的省略は、【a year after】の後に、間代ではなく、接続詞【that】が省略されているのみである。

【Deliverrance】は、その直前に、【in his first movie,】と有る様に、映画の題名であり、イタリック体で入力するか、映画名の直後に、丸括弧で括った公開年を付記する方、が親切な英文構築である。

だが、口語会話で、イタリック体である事を示す特別な発音は存在しないのだから、英語を第一言語としない者は、こういう不親切な表記に出逢った時に、それと気付く事が出来る様になっている必要がある。

その要求を自然に充たすのは、【普段】(日々)・【不断】(恒常的な)の英語利用である。

とは言え、その《不親切な表記》の原文での、其れは【Deliverrance】であり、【deliverrance】とされておらず、文中内での大文字開始の名詞として、英文入力がなされている点は、其れが固有名詞である事を示唆しているため、まだ救いが有る。



★日本語訳例:
これ(映画)は、ネッド・ビーティが旅行者役として田舎者に襲われたことで有名な、最初の作品『脱出』、の翌年に作られたもの(映画)で、今作で、彼は旅行者を襲う事を習慣化している貧困層の白人になっている。

 

返り読みを避け、文意を変え無い様に、訳した。

言語それ自体の性質が異なるので、返り読みは悪い事では決して無いが、

口語文の即時理解に力点を置くなら、返り読みを避ける英文理解に寄与する訳出法を身に付けておくのは、とても有益である。

【marauding】は【attacking】を目的に【徘徊する事】を意味するが、

襲撃の意を二重で訳出するのは下手な翻訳と言えるので、【習慣化している】と訳出した。

副詞用法【now】は【今作で】と訳出した。

 

なお、最大の問題箇所《【famously】+受動態》の部分だが、この箇所を「有名にも襲われ」などと訳してはいけない。

 

尚、主語の「This」は、This movieであり、that節は《SV* in his first movie, Deliverance》で閉じている。

that節は《映画『脱出』(1972)において、SV*》と訳するのが、本来正しい。

 

*SV=主語(S)+動詞(V)

 

「a year after」から「Deliverance」までが、主語の「This」の述部の一部であり、

その述部の核である「was made」を修飾する副詞節を成す。

だが、この素直な訳出は、【famously】と相性が悪い。

《この【famously】は悪質な挿入》と断じて良い。

そこで、「Ned Beatty (as a tourist) was famously attacked by hillbillies in his first movie,」

は「Deliverance」の説明であり、「famously」も其の一部である、と読み替えた。

「Deliverance」直前の【,】(【コマ(comma)】)は、【同格】の意。

この様に「famously」を処理する事に因り、「and now」以下を、主語の説明として結び、

二つの【映画(movie)】を対比させた、日本語訳に仕上げる事が可能になっている。

上述の処理をパターン化すると、【副詞+受動態】=【Vされた事で副詞】という型が得られる。

 

尚、この映画の原作はRichard Mathesonの短編小説で、脚本も本人が務めている。

経年の評価はIMDbもallcinemaでも低いが、比較的高い評価を受けている、

Jonathan Mostow 監督作(1997)『Breakdown』(Kurt Russell主演)は、

『Dying Room Only』(1973)の流れと本質とが変わらないので、

本作に対する評価の低さは当てにならない。

 

『Breakdown』を楽しめた者なら、『Dying Room Only』をも楽しめる、と私は思う。