第2話 /第一章「トモダチ」 | 泡姫物語2*ソープ嬢の恋*

第2話 /第一章「トモダチ」

「モモカちゃん、どうかした?」



とあみちゃんがつぶやく。



「あ・・うん、なんでもない。ごめんね。」




ごまかすしかなかった。


その場で問いただすなんて、


アタシにはできない。




席に着くと、堤さんと仲良さそうにメニューを広げて、



「何食べる~?」



と嬉しそうなあみちゃん。




アタシは、気が動転したままだ。



どうにか、飲み物だけ注文し、



作り笑顔で彼女たちの様子を見ていた。




「久しぶりだよね~モモカちゃん。」




と屈託のない表情で話し始めるあみちゃん。




「お仕事は、まだされてるんですか?」




と堤さんが聞いてくる。



どこまで知ってるんだろう?と身構えると、




「あ・・・ツーちゃんとはお店で知り合ったの。

だから、仕事のこと知ってるんだ。」




とあみちゃんが言った。




「私、ずっと風俗やめたくていたんだけど、

この不況でしょ。仕事も見つからないし、とりあえずソープやってたの。

でもね、ツーちゃんと出会って・・・ね。」




と彼にウインクをしながら、話し続ける。




「ソープもやめようと思えたし、今すごく幸せだし、

ホントよかったって思ってるんだ。」




「そうなんだ・・・」




笑顔を浮かべ、相槌を打つしかない状況・・・




何が何だか分からない。



そもそも、何故、彼氏をここに連れてきたのか・・・



そして、何故、私のサンダルを履いているのか・・・



わざとなのか?



それとも、私のではないのだろうか?




「モモカさんは、他にお仕事とかされてるんですか?」




1人で、悶々と考え込むアタシに、堤さんが質問する。




「え?いや・・・特には。」




「そうですか・・・普通のお仕事とかは、する予定はないんですか?」




その言葉に、すこしムッとする。




「いえ、いずれは戻る予定ですけど。」




「そうですか。」



と言いながら、堤さんは、バッグから、


書類を取り出し、




「お仕事、一緒にしませんか?」




と唐突に、言った。




「へ?」




訳が分からず、あみちゃんのほうを見ると、


うんうん。とうなずいている。




「僕、健康食品の代理店の仕事をしているんです。

彼女にも、この仕事を、手伝ってもらってます。」




「健康食品・・・・?」





堤さんは、満面の笑みで話し続ける。




「今、月にどのくらい稼いでいらっしゃいます?

100万くらい?それ以上?

でも、今のお仕事じゃ、身体にも負担があるでしょうし、

精神的にも辛いですよね。

長く続けられる仕事でもないと思います。

もし、私の紹介するお仕事で、同じくらいの額が稼げるとしたら、

どうですか?」




堤さんは、ボールペンを取り出して、


息つく間もなく、話し続ける。




「仕組みをお話しますね。

ここをご覧になってください。ここが僕らの親会社です。

健康食品の販売を主にしている会社です。

そして、僕がこの会社から、卸値で食品を購入し、

社員である皆さんに、その商品を卸します。

これを、他の方にセールスして頂いて、売るんです。

数多く売れば、それだけの利益が得られます。

商品はものすごくいいものですので、

初期費用は多少かかりますが、すぐにそれ以上の利益が見込めます。」



マシンガンのように話し続ける堤さん・・・


アタシは、その図と、しくみを見てすぐに、


「ネズミ講」だと気がついた。



もしかすると、あみちゃんもこの男に、騙されているのかもしれない。




「初期費用って、どのくらいかかるんですか?」




男は、回りくどい話を繰り返しながら、


なかなか金額を言おうとしない。


もう一度、



「初期費用は?」



と聞き返すと、



「100万ですけど、これはすぐに元が取れます。

この食品は、本当にすぐれているものですから、

皆さん、とても欲しがるんです。

安いくらいですよ。」




と、笑顔のままいった。






「申し訳ないですが、私は借金がすでにたくさんあるので、

その初期費用は用意できません。」





騙されるつもりなど、毛頭なかったが、


アタシは、あみちゃんの手前、そのように答えた。






「ローンもありますよ、でもすぐに、元は取れます!」





もう一度笑顔。





「いえ・・・無理です。」





と言ったアタシに、



堤さんが顔色を曇らせてつぶやいた。





「一生、ソープ嬢でいるつもりですか?」




と・・・