泡姫物語2*ソープ嬢の恋* -7ページ目

第2話 /第一章「トモダチ」

「モモカちゃん、彼氏いるの?」


今日で3度目のお客様。


ずっと通ってくれるだろうか・・・・



アタシは、少し悲しい顔で、嘘を吐く。



「うーん・・・いないんですよぉ。」



いつまでこれで、引っ張れるか・・・・



駆け引きは。難しい。



そりゃあ、指名はないよりも、あったほうがいい。


手取りも2000円UPする。


それに、指名があった日は、


お店も、多くお客様をつけてくれるようだ。




面接の時に、個室待機を希望したアタシには、


他の子がどれくらいお客さんについているのか、


今日、店はどれくらい忙しいのか、


出勤しても、知ることは出来なかった。



お店には、控え室が3つあること、


女の子の派閥があるらしいこと、


そんな情報も、通いなれたお客様から得た。



今までは、みんなと仲良くできたけれど、


ソープはなんとなく、違うような気がして、


控え室待機は、怖かったのだ。




個室待機なら、


他の子が何人ついてるか。なんて気にしなくてすむし、


店の悪い噂も、耳に入らない分、


オシゴトに集中できる。


暗い個室で、不安になったり、


とんでもない客に当たっても、


はけ口はないけれど、



アタシには、


「1人で頑張る」


という、このスタイルがあっている気がした。




彼氏がいない。なんて、


いつも嘘をついているけれど・・・・



カズとは、


まだ、お付き合いが続いている。



「ソープで働いている。」



ということは、


結局、伝えていない。


伝えるタイミングを、完全に逃してしまった。




アタシはカズに、仕事の話はしなくなった。



カズも、アタシに、何も聞いてこなくなった。



だから。


アタシは。


どんなにつらくても、


カズに愚痴はこぼさなくなった。




いや・・・


こぼせなくなったのだ・・・・




ひどく曖昧な関係が、続いていたけれど、


いつか、借金がなくなって。


アタシが「普通」になれたとき。



そのときにちゃんと、



カズと真正面から向き合おう。



そう、思っていた。




第2話 /第一章「トモダチ」

どうして今更微笑んでいるの?


どうして今更抱きしめてくれるの?


はっきりとは見えない。


ぼやけてよく見えない。


本当に君なのかも、


よくわからない。



でも。


アタシが呼んでいた名前・・・





トゥルルルルルルルル





電話のコール音。



びっくりして飛び起きる。




固いベッド。



サイズ別のゴム。



小ぶりな湯船。



遠くから聞こえるアエギ声。





ここは、


アタシが働くソープの個室。





「はい」





「桃花さん。ご指名のお客様お願いします。」





ここ最近、ひどく忙しい。


夏のボーナスが出たせいだろう。


指名のお客さんが来るまでの、


30分ほどの時間を、


アタシは、ベッドに横になって過ごした。



そんなわずかな休息の時間にまで、


現われる幻影・・・・




「何で、今更・・・・」




髪を整えながら、アタシはつぶやく。




ソープ嬢になって2ヶ月あまり。


お店は、それなりに繁盛していて、


17時~ラストまでの出勤で、


お客様が5人を切ることはほとんどない。



支払いも落ち着いたし。


やりたいこともできるようになった。


休みの日には、


念願だったネイルスクールにも通っていて、


「毎日が充実している」


そう思える。




女子高生風の格好をし、


前髪をシュシュでしばり。


階段を上がってくるご指名のお客様に、


大きな声で、挨拶をする。




「こんにちわぁ~お久しぶりですぅ♪」




モモカは、いつも元気だ。


いつも元気でいなくちゃいけない。


それがアタシの唯一のとりえなのだから・・・・






第2話 /プロローグ

固く閉ざしていた瞳を


ほんの少し開いた


胸が潤む・・・・


そんな、初めての感覚



かみさま。



すべては一時的感情で


出てきた代物なら



それは間違いですよと


警告してください。



傷つく未来が、先に待っているよと


警告してください。




これは・・・・



過ちですか・・・・