第2話 /第一章「トモダチ」
一瞬、耳を疑った。
彼が口元に浮かべた笑みで、
侮辱されたことに気がつく。
「そんなこと言われる筋合いないと思いますが。
失礼ですけど、これって、ネズミ講ですよね?」
黙ってるなんてできなかった。
「ちょっと・・・!」
あみちゃんが割って入る。
「何を根拠に・・・失礼だな・・・」
男が立ち上がる。
「こういった手法が、完全にネズミ講だと思うんですが、違いますか?」
堤さんは、チッと舌打ちをして、
「なんでこんなヤツ、紹介すんだよ。」
と吐き捨てるように言い、
その場から立ち去った。
「あ・・・」
と、立ち上がるあみちゃん。
アタシは彼女に問いかける。
「100万・・・払っちゃったの?」
「何であんな言い方するの?ひどいじゃない。」
彼女はひどく興奮していた。
「ごめんね・・・でも、あみちゃんだま・・・」
「騙されてるっていうんでしょ?知ってるよ。そんなの。
でも、それでもいいの!」
そして、その場で泣き崩れた・・・
彼女はこんなに、
弱い子だったろうか・・・
ピンサロで、
私の前に立ちはだかってくれた
あの頃の彼女は、
もういない・・・
周りを気にせず、ひとしきり泣いた後、
「ごめん。」
と言って、カバンの中から何かを取り出す。
「○△メンタルクリニック」
と書かれた薬袋から、
クスリを一粒取り出し、口にほおりこんだ。
「かわいそうとか思ってるんでしょ?
分かってる。分かってるけど、
好きなんだもん。どうしようもないじゃない。」
目の前にいる彼女と、あの頃のアタシが重なる。
痛いほどわかる。
その気持ちが・・・・
初めてのソープで、アタシと同じように不安だった彼女。
初めてついた、指名のお客様が、
堤さんだったそうだ。
何度も何度も、通ってくれる彼に、
彼女は心を許していく・・・
そして、
「俺と付き合ってほしい。」
きっと、それが彼の手口なのだ・・・・
弱っている彼女に、その言葉はてきめんだった。
あれよあれよという間に、契約をさせられ、
大量の商品が、家に送られてきた。
親にも言えず、大学時代の友達や、
昔の友達に連絡をする。
けれど、みんなから断られ、
今度は、お店の子にも、売ろうとしたのだ。
「みんなにバカにされたの。
そうやってモモカちゃんみたいに、ねずみ講だって。
その前日まで、仲良かったのに、
彼氏のこと話したら、寄ってたかって無視された。」
彼女はイライラしながら話し続ける。
「どんなに商品がいいものだ。って話しても、
聞く耳も持たないの。
だから仕返ししてやったの。」
「盗んだの・・やっぱり、あみちゃんなのね・・・」
彼女は力なく、うなずいた。
「ねえ、モモカちゃん、アタシから商品買って。
あんな風に、彼氏のこと邪険に扱わないで、
一緒に仕事やって。
そうすれば・・・・そうすれば・・・・」
3ヶ月の間に。
アタシの知っているあみちゃんは、
どこへ行ってしまったのだろうか?
「解約できないの?」
「消費者センターに相談したら?」
そういう言葉も、彼女には届かない・・・
かける言葉が無くなり、
やがて、沈黙が訪れる。
「じゃあ。もう会うことはないと思うけど。」
と、あみちゃんが、立ち上がった。
「待って。」
と彼女の手をつかむ。
「関わらないほうがいいよ。
モモカちゃんも、頑張ってね。」
とアタシを振り払い、
テーブルに1000円をほおり投げ、
バイバイと手を振って、行ってしまった・・・
彼が口元に浮かべた笑みで、
侮辱されたことに気がつく。
「そんなこと言われる筋合いないと思いますが。
失礼ですけど、これって、ネズミ講ですよね?」
黙ってるなんてできなかった。
「ちょっと・・・!」
あみちゃんが割って入る。
「何を根拠に・・・失礼だな・・・」
男が立ち上がる。
「こういった手法が、完全にネズミ講だと思うんですが、違いますか?」
堤さんは、チッと舌打ちをして、
「なんでこんなヤツ、紹介すんだよ。」
と吐き捨てるように言い、
その場から立ち去った。
「あ・・・」
と、立ち上がるあみちゃん。
アタシは彼女に問いかける。
「100万・・・払っちゃったの?」
「何であんな言い方するの?ひどいじゃない。」
彼女はひどく興奮していた。
「ごめんね・・・でも、あみちゃんだま・・・」
「騙されてるっていうんでしょ?知ってるよ。そんなの。
でも、それでもいいの!」
そして、その場で泣き崩れた・・・
彼女はこんなに、
弱い子だったろうか・・・
ピンサロで、
私の前に立ちはだかってくれた
あの頃の彼女は、
もういない・・・
周りを気にせず、ひとしきり泣いた後、
「ごめん。」
と言って、カバンの中から何かを取り出す。
「○△メンタルクリニック」
と書かれた薬袋から、
クスリを一粒取り出し、口にほおりこんだ。
「かわいそうとか思ってるんでしょ?
分かってる。分かってるけど、
好きなんだもん。どうしようもないじゃない。」
目の前にいる彼女と、あの頃のアタシが重なる。
痛いほどわかる。
その気持ちが・・・・
初めてのソープで、アタシと同じように不安だった彼女。
初めてついた、指名のお客様が、
堤さんだったそうだ。
何度も何度も、通ってくれる彼に、
彼女は心を許していく・・・
そして、
「俺と付き合ってほしい。」
きっと、それが彼の手口なのだ・・・・
弱っている彼女に、その言葉はてきめんだった。
あれよあれよという間に、契約をさせられ、
大量の商品が、家に送られてきた。
親にも言えず、大学時代の友達や、
昔の友達に連絡をする。
けれど、みんなから断られ、
今度は、お店の子にも、売ろうとしたのだ。
「みんなにバカにされたの。
そうやってモモカちゃんみたいに、ねずみ講だって。
その前日まで、仲良かったのに、
彼氏のこと話したら、寄ってたかって無視された。」
彼女はイライラしながら話し続ける。
「どんなに商品がいいものだ。って話しても、
聞く耳も持たないの。
だから仕返ししてやったの。」
「盗んだの・・やっぱり、あみちゃんなのね・・・」
彼女は力なく、うなずいた。
「ねえ、モモカちゃん、アタシから商品買って。
あんな風に、彼氏のこと邪険に扱わないで、
一緒に仕事やって。
そうすれば・・・・そうすれば・・・・」
3ヶ月の間に。
アタシの知っているあみちゃんは、
どこへ行ってしまったのだろうか?
「解約できないの?」
「消費者センターに相談したら?」
そういう言葉も、彼女には届かない・・・
かける言葉が無くなり、
やがて、沈黙が訪れる。
「じゃあ。もう会うことはないと思うけど。」
と、あみちゃんが、立ち上がった。
「待って。」
と彼女の手をつかむ。
「関わらないほうがいいよ。
モモカちゃんも、頑張ってね。」
とアタシを振り払い、
テーブルに1000円をほおり投げ、
バイバイと手を振って、行ってしまった・・・
第2話 /第一章「トモダチ」
「モモカちゃん、どうかした?」
とあみちゃんがつぶやく。
「あ・・うん、なんでもない。ごめんね。」
ごまかすしかなかった。
その場で問いただすなんて、
アタシにはできない。
席に着くと、堤さんと仲良さそうにメニューを広げて、
「何食べる~?」
と嬉しそうなあみちゃん。
アタシは、気が動転したままだ。
どうにか、飲み物だけ注文し、
作り笑顔で彼女たちの様子を見ていた。
「久しぶりだよね~モモカちゃん。」
と屈託のない表情で話し始めるあみちゃん。
「お仕事は、まだされてるんですか?」
と堤さんが聞いてくる。
どこまで知ってるんだろう?と身構えると、
「あ・・・ツーちゃんとはお店で知り合ったの。
だから、仕事のこと知ってるんだ。」
とあみちゃんが言った。
「私、ずっと風俗やめたくていたんだけど、
この不況でしょ。仕事も見つからないし、とりあえずソープやってたの。
でもね、ツーちゃんと出会って・・・ね。」
と彼にウインクをしながら、話し続ける。
「ソープもやめようと思えたし、今すごく幸せだし、
ホントよかったって思ってるんだ。」
「そうなんだ・・・」
笑顔を浮かべ、相槌を打つしかない状況・・・
何が何だか分からない。
そもそも、何故、彼氏をここに連れてきたのか・・・
そして、何故、私のサンダルを履いているのか・・・
わざとなのか?
それとも、私のではないのだろうか?
「モモカさんは、他にお仕事とかされてるんですか?」
1人で、悶々と考え込むアタシに、堤さんが質問する。
「え?いや・・・特には。」
「そうですか・・・普通のお仕事とかは、する予定はないんですか?」
その言葉に、すこしムッとする。
「いえ、いずれは戻る予定ですけど。」
「そうですか。」
と言いながら、堤さんは、バッグから、
書類を取り出し、
「お仕事、一緒にしませんか?」
と唐突に、言った。
「へ?」
訳が分からず、あみちゃんのほうを見ると、
うんうん。とうなずいている。
「僕、健康食品の代理店の仕事をしているんです。
彼女にも、この仕事を、手伝ってもらってます。」
「健康食品・・・・?」
堤さんは、満面の笑みで話し続ける。
「今、月にどのくらい稼いでいらっしゃいます?
100万くらい?それ以上?
でも、今のお仕事じゃ、身体にも負担があるでしょうし、
精神的にも辛いですよね。
長く続けられる仕事でもないと思います。
もし、私の紹介するお仕事で、同じくらいの額が稼げるとしたら、
どうですか?」
堤さんは、ボールペンを取り出して、
息つく間もなく、話し続ける。
「仕組みをお話しますね。
ここをご覧になってください。ここが僕らの親会社です。
健康食品の販売を主にしている会社です。
そして、僕がこの会社から、卸値で食品を購入し、
社員である皆さんに、その商品を卸します。
これを、他の方にセールスして頂いて、売るんです。
数多く売れば、それだけの利益が得られます。
商品はものすごくいいものですので、
初期費用は多少かかりますが、すぐにそれ以上の利益が見込めます。」
マシンガンのように話し続ける堤さん・・・
アタシは、その図と、しくみを見てすぐに、
「ネズミ講」だと気がついた。
もしかすると、あみちゃんもこの男に、騙されているのかもしれない。
「初期費用って、どのくらいかかるんですか?」
男は、回りくどい話を繰り返しながら、
なかなか金額を言おうとしない。
もう一度、
「初期費用は?」
と聞き返すと、
「100万ですけど、これはすぐに元が取れます。
この食品は、本当にすぐれているものですから、
皆さん、とても欲しがるんです。
安いくらいですよ。」
と、笑顔のままいった。
「申し訳ないですが、私は借金がすでにたくさんあるので、
その初期費用は用意できません。」
騙されるつもりなど、毛頭なかったが、
アタシは、あみちゃんの手前、そのように答えた。
「ローンもありますよ、でもすぐに、元は取れます!」
もう一度笑顔。
「いえ・・・無理です。」
と言ったアタシに、
堤さんが顔色を曇らせてつぶやいた。
「一生、ソープ嬢でいるつもりですか?」
と・・・
とあみちゃんがつぶやく。
「あ・・うん、なんでもない。ごめんね。」
ごまかすしかなかった。
その場で問いただすなんて、
アタシにはできない。
席に着くと、堤さんと仲良さそうにメニューを広げて、
「何食べる~?」
と嬉しそうなあみちゃん。
アタシは、気が動転したままだ。
どうにか、飲み物だけ注文し、
作り笑顔で彼女たちの様子を見ていた。
「久しぶりだよね~モモカちゃん。」
と屈託のない表情で話し始めるあみちゃん。
「お仕事は、まだされてるんですか?」
と堤さんが聞いてくる。
どこまで知ってるんだろう?と身構えると、
「あ・・・ツーちゃんとはお店で知り合ったの。
だから、仕事のこと知ってるんだ。」
とあみちゃんが言った。
「私、ずっと風俗やめたくていたんだけど、
この不況でしょ。仕事も見つからないし、とりあえずソープやってたの。
でもね、ツーちゃんと出会って・・・ね。」
と彼にウインクをしながら、話し続ける。
「ソープもやめようと思えたし、今すごく幸せだし、
ホントよかったって思ってるんだ。」
「そうなんだ・・・」
笑顔を浮かべ、相槌を打つしかない状況・・・
何が何だか分からない。
そもそも、何故、彼氏をここに連れてきたのか・・・
そして、何故、私のサンダルを履いているのか・・・
わざとなのか?
それとも、私のではないのだろうか?
「モモカさんは、他にお仕事とかされてるんですか?」
1人で、悶々と考え込むアタシに、堤さんが質問する。
「え?いや・・・特には。」
「そうですか・・・普通のお仕事とかは、する予定はないんですか?」
その言葉に、すこしムッとする。
「いえ、いずれは戻る予定ですけど。」
「そうですか。」
と言いながら、堤さんは、バッグから、
書類を取り出し、
「お仕事、一緒にしませんか?」
と唐突に、言った。
「へ?」
訳が分からず、あみちゃんのほうを見ると、
うんうん。とうなずいている。
「僕、健康食品の代理店の仕事をしているんです。
彼女にも、この仕事を、手伝ってもらってます。」
「健康食品・・・・?」
堤さんは、満面の笑みで話し続ける。
「今、月にどのくらい稼いでいらっしゃいます?
100万くらい?それ以上?
でも、今のお仕事じゃ、身体にも負担があるでしょうし、
精神的にも辛いですよね。
長く続けられる仕事でもないと思います。
もし、私の紹介するお仕事で、同じくらいの額が稼げるとしたら、
どうですか?」
堤さんは、ボールペンを取り出して、
息つく間もなく、話し続ける。
「仕組みをお話しますね。
ここをご覧になってください。ここが僕らの親会社です。
健康食品の販売を主にしている会社です。
そして、僕がこの会社から、卸値で食品を購入し、
社員である皆さんに、その商品を卸します。
これを、他の方にセールスして頂いて、売るんです。
数多く売れば、それだけの利益が得られます。
商品はものすごくいいものですので、
初期費用は多少かかりますが、すぐにそれ以上の利益が見込めます。」
マシンガンのように話し続ける堤さん・・・
アタシは、その図と、しくみを見てすぐに、
「ネズミ講」だと気がついた。
もしかすると、あみちゃんもこの男に、騙されているのかもしれない。
「初期費用って、どのくらいかかるんですか?」
男は、回りくどい話を繰り返しながら、
なかなか金額を言おうとしない。
もう一度、
「初期費用は?」
と聞き返すと、
「100万ですけど、これはすぐに元が取れます。
この食品は、本当にすぐれているものですから、
皆さん、とても欲しがるんです。
安いくらいですよ。」
と、笑顔のままいった。
「申し訳ないですが、私は借金がすでにたくさんあるので、
その初期費用は用意できません。」
騙されるつもりなど、毛頭なかったが、
アタシは、あみちゃんの手前、そのように答えた。
「ローンもありますよ、でもすぐに、元は取れます!」
もう一度笑顔。
「いえ・・・無理です。」
と言ったアタシに、
堤さんが顔色を曇らせてつぶやいた。
「一生、ソープ嬢でいるつもりですか?」
と・・・
第2話 /第一章「トモダチ」
さすがに、その場で出るわけにはいかず、
アタシは、家に帰るとすぐに電話をかけなおす。
「もしもし。」
少し緊張してかけた電話に、
「もしもし~モモカちゃん!久しぶり~」
前と変わらない、彼女の明るい声。
アタシは、そこで、彼女はやっていない。
と確信した。
「ごめんね~メール返せなくて~
お店めんどくさくなってやめちゃったんだ~
モモカちゃんは頑張ってるんだね~」
同じ戦場で戦っていた友達との会話は
心地がいい。
盗難事件の話はできないまま、
ガールズトークは、2時間経過する。
「ねえ、もしよかったら、明日出勤前にお茶しない?」
明け方になりそうなのを察してか、
あみちゃんが言う。
アタシは、シゴトの前に人に会うと、
出勤しなくなる癖がある。
でも、久しぶりに彼女と会えるなら・・・
と、その誘いを受けた。
盗難事件のこと、話してみようか?
でも、関係ないんだから、話す必要はないか・・・
少しだけ気にしながら、
アタシは次の日、待ち合わせたファミレスへと向かった。
早く出てきたせいか、
彼女はまだ来ていない。
先に席について、メニューを広げた。
ブーブーブー
テーブルに置いた携帯が鳴り出す。
椅子から立ち上がりながら、
「もしもーし」
と電話に出ると、
ちょうど入り口のところで、
「ごめんね~」
とあみちゃんが手を振っている。
その彼女の横には・・・
見知らぬ男性・・・
誰だろう・・・?
彼女は、その男性と一緒にアタシの所まで来て、
「ごめんね~彼氏なの~」
と言った。
「堤です。」
と彼が、手を差し出す。
その差し出された手の意味が分からずに、
戸惑うアタシ。
「もう~ツーちゃんすぐ握手求めるんだから~
やめなよ~モモカちゃんびっくりしてるじゃん~」
あみちゃんが言う。
「あ・・・ごめんなさい。握手ですね。」
と謝ると、
「はじめまして。」
と堤さんは再度、握手を求めてきた。
アタシは、その手を握り、
軽くお辞儀をする。
そして、彼女達の足元に視線を落とした。
え・・・・・?
「ツーちゃん奥入って~」
と、先に席を勧めるあみちゃん。
その間。
アタシは、彼女の足元から、
目が離せなかった・・・・
何で?
どうしてだろう?
その場から動けない・・・
不思議そうに、アタシを見るあみちゃん。
昨日、盗まれたはずの、
アタシのサンダル。
彼女が履いていたのは、
まさにそれだったのだ・・・・
アタシは、家に帰るとすぐに電話をかけなおす。
「もしもし。」
少し緊張してかけた電話に、
「もしもし~モモカちゃん!久しぶり~」
前と変わらない、彼女の明るい声。
アタシは、そこで、彼女はやっていない。
と確信した。
「ごめんね~メール返せなくて~
お店めんどくさくなってやめちゃったんだ~
モモカちゃんは頑張ってるんだね~」
同じ戦場で戦っていた友達との会話は
心地がいい。
盗難事件の話はできないまま、
ガールズトークは、2時間経過する。
「ねえ、もしよかったら、明日出勤前にお茶しない?」
明け方になりそうなのを察してか、
あみちゃんが言う。
アタシは、シゴトの前に人に会うと、
出勤しなくなる癖がある。
でも、久しぶりに彼女と会えるなら・・・
と、その誘いを受けた。
盗難事件のこと、話してみようか?
でも、関係ないんだから、話す必要はないか・・・
少しだけ気にしながら、
アタシは次の日、待ち合わせたファミレスへと向かった。
早く出てきたせいか、
彼女はまだ来ていない。
先に席について、メニューを広げた。
ブーブーブー
テーブルに置いた携帯が鳴り出す。
椅子から立ち上がりながら、
「もしもーし」
と電話に出ると、
ちょうど入り口のところで、
「ごめんね~」
とあみちゃんが手を振っている。
その彼女の横には・・・
見知らぬ男性・・・
誰だろう・・・?
彼女は、その男性と一緒にアタシの所まで来て、
「ごめんね~彼氏なの~」
と言った。
「堤です。」
と彼が、手を差し出す。
その差し出された手の意味が分からずに、
戸惑うアタシ。
「もう~ツーちゃんすぐ握手求めるんだから~
やめなよ~モモカちゃんびっくりしてるじゃん~」
あみちゃんが言う。
「あ・・・ごめんなさい。握手ですね。」
と謝ると、
「はじめまして。」
と堤さんは再度、握手を求めてきた。
アタシは、その手を握り、
軽くお辞儀をする。
そして、彼女達の足元に視線を落とした。
え・・・・・?
「ツーちゃん奥入って~」
と、先に席を勧めるあみちゃん。
その間。
アタシは、彼女の足元から、
目が離せなかった・・・・
何で?
どうしてだろう?
その場から動けない・・・
不思議そうに、アタシを見るあみちゃん。
昨日、盗まれたはずの、
アタシのサンダル。
彼女が履いていたのは、
まさにそれだったのだ・・・・