6月15日に開幕したコンフェデレーションズカップ。日本は開幕戦でブラジルと激突しました。結果は殆ど良いところがないまま0-3の完敗。選手達からはネガティブな発言が飛び出し、ザッケローニ監督からは「失望」という本当に残念なコメントが出ました。絶望的なブラジル戦から中3日、今度の相手はヨーロッパ準優勝のイタリア。どうやって切り替えて強豪に立ち向かうかを注目ポイントとして試合を視聴しました。



 メンバーはいつも通りの4-2-3-1で、前田がトップに戻って来ました。やはり奇襲というのは強豪相手には通用しないと思ったのではないでしょうか?試合開始直後から香川や本田の動きが非常によく、積極的にプレスをかけている姿を見て積極的にプレーしている実感しました。事実、イタリアは浮き足立って思い通りにプレー出来ず、日本がテンポ良いいつものパス回しが出来主導権を握りました。



 距離感がよくボランチが攻撃絡んで両サイドに散らす攻撃は、互いの共通理解がしっかり出来ていて主導権は日本が握っていました。そうなると先制点は時間の問題で、デシーリオのミスパスを奪った岡崎がブッフォンに倒されてPKを獲得。ボールを持った本田が動きを見切って決めました。日本が先制する意外な展開となりましたが、試合の流れを見ていると決して意外ではなく当然の結果でした。



 リズムを握った日本は更にイタリアを押し込み2点目もセットプレーからの流れから、香川の芸術的なボレーシュートがネットに突き刺さり、正直これは勝てるのではないかと胸をときめかせました。しかし、イタリアのブランデッリ監督は前半のうちにアクイラーニを下げてジョビンコを投入。それだけイタリアの攻撃が出来ていない証となりました。司令塔のピルロにも仕事をさせていませんでしたし、バロテッリも怖くなかった。



 いい流れのまま3点目も取れそうかなと思っていたら、飛ばしすぎた日本の足が止まりはじめイタリアが攻勢に出て来ます。プレッシャーが効かなくなるとピルロが攻撃に顔を出し始め、コーナーキックのチャンスを得ます。日本の選手が水と取りマークが突き切れない状況で、冷静なピルロは正確なキックを入れるとデ・ロッシがヘディングを決めて1点差に追い付きました。2-0で折り返すのと1点差で折り返すのでは全然違います。



 したたかなイタリアの攻撃で1点を奪われ、ちょっと嫌だなと思いながら前半を終了しましたが、2-1とリードしているのだから、守りに入るのではなく上手く試合を進めつつ3点目を奪いに行って欲しいと願っていました。実際、ザッケローニ監督も「最初の10分イタリアは出てくるから気をつけろ。」と指示を出していました。守勢に回らず3点目を奪えれば勝てると思いましたが、イタリアはやはり一筋縄では行きませんでした。



 後半開始直後から攻勢に転じると、ゴール前の縦パスをクリアし損ねた吉田からボールを奪ったジャッケリーニがグランダーのクロスを送り、それが内田クリアーミスを誘い尾運ゴールですぐに同点。立て続けにペナルティエリアでハンドを取られてPKを与えてしまいバロテッリに冷静に決められあっさり逆転されてしまいました。それにしても悪くなかったのに逆転されたのは、ちょっと納得がいかない。




 逆転されてこのまま終わってしまうのかと思いましたが、逆転されて目を覚ましたサムライブルーは、何とか同点にしようとパスを回します。しかし、イタリアの守備を崩せぬままこほまま試合巧者振りを見せ付けられて負けるのではないかと嫌な予感がした矢先、日本がフリーキックを獲得。名手遠藤が蹴ったボールは岡崎の頭に合ってブッフォンの手をかすめてゴールに吸い込まれて3-3の同点に追い付き、再び息を吹き返しました。



 こうなると勝ちきってくれと思いつつ決定的なチャンスが、岡崎・香川に訪れますがいずれもポスト・クロスバーにはじかれてゴールになりません。チャンスは中々来ないのだから決めなければいけないと思っていたら、イタリアはゴール前抜け出したマルキージオからフリーのジョビンコが押し込んで4-3と勝ち越されました。チャンスは日本のほうが多かったのに結果としては4-3。内容が悪くてもしっかり勝ちにつなげる。経験に裏づけされた勝負強さ。これがヨーロッパで戦っていく上では必要だと思い知らされました。



 3ゴール奪っても4ゴール奪われては勝てる試合も勝てない。内容もよかったのですが、ミスを突かれてゴールに結び付けられる。こういう事は経験をしないとなかなか身に付くものではありません。「ああ惜しかったなあ。悔しいなあ。」では、ワールドカップで上位に進出する事は出来ないでしょう。今回の試合は多くの収穫と課題を得たターニングポイントになると思います。



 収穫は日本の攻撃やテクニックが、世界トップクラス相手でも十分通用する点。選手たちが自信を持ってプレーしている姿は本当に頼もしかったです。課題は守備面と監督の采配と選手層の薄さです。守備はオーガナイズされていると思いましたが、結局個の力で崩されてやられています。攻撃面が良くても守備面が駄目だとやられてしまう典型的な試合となりました。




 また、ザッケローニ監督の采配もちょっと疑問があります。イタリアは疲れていたのですから、乾や清武を入れてドリブルで仕掛けたりするなどの手もあったはず。ハーフナーもちょっと中途半端な使い方ですし、タイミングが後手後手になってから出ないと動けない。プランデッリ監督が前半から動いたのとは対照的です。国内組を含めた選手選考のやり直しや監督の交代なども考えなければ、今回得た自信と突きつけられた課題を埋めて世界のトップを脅かすチームにはならないでしょう。1年間代表強化のためによりよいマッチメークを期待します。