昨日、来年2月8日・9日にさいたまスーパーアリーナで開催されるμ’s4thライブのチケット申し込みの当落がメールが送られて来ました。結果は当然のようにはずれでした。しかし、当然のようにという表現を使ったのには理由があります。ライブに足を運びたい人が、さいたまスーパーアリーナのキャパシティをはるかに超えているからです。ここまでのコンテンツに成長したのには理由があるはずと思った私は、歴史を振り返りつつ要因について探ってみようと思います。



 ラブライブ!の企画が発表されたのは2010年7月でした。電撃G’sマガジンに掲載されたサンライズ・ランティス・電撃G’sマガジンの合同企画。ファン参加型というのが大きな特徴で、担当する声優もほとんどが新人か異業種からの参入者でした。キャラクターもいきなり登場して知名度はゼロ。声優も当時活躍していたといえば、fripSideのヴォーカルを務めていた南條愛乃さんと角川作品に出演してた内田彩さんぐらい。今をときめく三森すずこさんや徳井青空さんも当時は全くの新人声優でした。




 殆ど情報が出ない中で、コミックマーケット78でファーストシングル「僕らのLIVE君とのLIFE」が発売されましたが、注目されることはありませんでした。実際店頭に並びましたが、購入した人は数えるほど。順位もオリコンで最高位167位というアニソンが売れている状況では考えられない売上でした。2010年はけいおん!・Angel Beats!という2大作品があったわけですから、売れる土壌があった中での数百枚単位の売上に終わった惨敗ですから、駄目だと思うのも仕方ありません。



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                  うーん、コレどうなのと思ってしまいますね



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               流石に最初は見向きもされないか



 しかし、裏を返せば売り方を変えればまだまだ伸びシロがあったわけです。それがファンになってくれた人と声優さんやラブライブ!の企画自体にいい意味での近い距離感を与えました。セカンドシングル「Snow halation」が発売された時には、グループ名をファンから募集しようと制作サイドから投げかけられ、AKB48でも使われているセンターを誰にするかファン投票で決めようという企画も始まりました。




 自分たちが主体的に携わることが出来るし、新人が殆どの声優ばかりですからプロモーションも皆揃って出来る可能性が高い。少しずつ芽が花になっていくかのように成長していく企画は、声優の成長や活躍を追いかける一面もありました。完成されている声優ばかりだと、出来が良い作品は出来る可能性はありますが、感情移入はしにくい。しかし、新人ばかりだと企画の成長とともに声優の技量やトークの向上を目の当たりにして、「あの子は上手くなったなあ。他の作品に出たら応援しよう。」という気持ちが湧き上がる人が多かったように思えます。




 そうした成果が徐々に形となって現れ始めたのが2011年からです。ニコニコ生放送で毎月放送され始めた「ラブライ部課外活動ことほのうみ」(第9回からことほのまきに変更)とネットラジオにこりんぱなのスタートです。ネットコンテンツを生かして、まだ知名度が低かった作品のプロモーションが始まりました。それでどちらも面白いと思ったのが、キャラクターについて知ってもらおうとするコーナーと声優の魅力を伝えるコーナーがそれぞれ存在した事です。



 ラブライブ!も声優も発展途上で、これからドンドン伸びていく可能性がある。今となっては、そうとしか考えられないのですが、当時は若手のゴリ押しとか始まってないコンテンツとかアイマスのパクリとか思っていた人も多かったですね。事実私もそうでした。少しずつ着実にファンが増え始め、2011年9月のイベントではファーストライブ開催が発表されました。このときのイベントは、公開打ち上げパーティという名目で古参のラブライバーの皆さんが多く集まりました。




 露出が徐々に増え始めファンも増加していく中で、コンテンツの成長と声優の成長が重なり始めるラブライブ!2012年2月には、今は閉鎖された横浜BLITZにてファーストライブが開催されました。ライブハウスですからお客さんもそれほど多くありませんでしたが、1年半分の盛り上がりがあり、ファーストライブは大成功に終わりました。そして、このライブで2013年1月よりテレビアニメ化が決定したと発表されました。



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                ファーストライブの名残ですね


 アニメ化のタイミングは、私は非常に良かったと思います。それはなぜかというとアニメ化ありきで放送すると、新人ばかりですから稚拙な面が目立ってしまいます。アニヲタはそういうところを徹底して叩きますから、中々最初からアニメ化するわけにはいかなかった。また内容がオリジナルアニメなので、時間がかかったことも要因です。更にシングルを購入するとCDドラマが収録されているのですが、ようやく9人の立ち位置や声優の演技が追いついてきたというのも2013年1月放送スタートという時期に設定されたと思いました。コンテンツと声優の成長を待ってのアニメ化ですね。




 アニメ化はサンライズがプロジェクトに参加する事が決まっていたので規定路線なのですが、今までのCDドラマとは違った視点で描かれていました。第1話から第8話までは、主人公穂乃香を中心に廃校を阻止すべくμ’sが結成されるまでの姿が描かれました。特にターニングポイントになったのが第3話です。ファーストライブを新入生歓迎会の日に開催しようと1か月以上もの間、自分達の歌や踊りを必死に練習して披露しようと思ったら、会場にはお客さんが1人も来なかった。



 努力が水の泡になるところにたった1人だけ現れた小泉花陽の存在。否定しているかのように思えた絢瀬絵里も、本当は彼女達を見守りつつ自分のステージを探していた。キャラクター1人1人にアイドルへの思いがあって、非常に丁寧にキャラクターが掘り下げられていました。その中での新曲ありファーストシングルありですから、視聴者が共感しない人が少なく、共感しファンになる人が多くなるのは当たり前です。



 全く、知られていなかった当初から人気アニメに成長し、多くのファンを獲得した作品は3月に終了しました。アニメが終わってこれで一段落という感じにならなかったのが、成長する余地があるコンテンツの証拠です。3rdライブはパシフィコ横浜で開催され、チケットが入手できなかった人が続出。全国51会場でライブビューイングが行われました。アプリゲームのスクールアイドルパラダイスは、100万ダウンロードを突破。そして、来年には4thライブがさいたまスーパーアリーナで開催決定と、まさに小さな芽から大きな花が咲いた瞬間でした。



 簡単ですが3年間の歩みを振り返ってみると、ファンがいてまだ未完成なコンテンツがあって、これからが楽しみな声優が揃っていたラブライブは、ファンをちょっとづつ増やしながら、アニメ化をきっかけに大ブレイクしたわけです。そう考えてみると、マーケティングの力は大きいですね。ファンのニーズを汲み取り、どうしたら一番アニメの力を引き出しファンを獲得できるかよくわかっています。短絡的に作品をつくるのではなく、しっかりと耳を傾けどうしたら喜んでもらえるのか?ラブライブはそれを体現した作品と言えるのかもしれませんね。