深夜アニメが始まって17年、様々な作品が登場しました。しかし、歴史に残る作品は本当にごくわずか。ずっとファンで居続けられる作品も少なくなりました。そんなライフサイクルが早いアニメ業界の中で、深夜アニメによってメジャーになった制作会社といえば、京都アニメーションではないでしょうか。京アニ作品ならヒット間違いなし!ジブリと並ぶ日本を代表する制作会社と思った事もありました。それが最近はどうもパッとしない。売上の低下や注目度が格段に下がった事は否定出来ないと思います。では、何故そうなったのか歴史を振り返りつつ分析したいと思います。



①京都アニメーションの歴史

 京都アニメーションの創業は1981年、初期は他のアニメ作品の下請けがメインでした。シンエイ動画作品であるクレヨンしんちゃんの下請けを担当していた事は有名です。そんな京アニが元請け作品を最初に手がけたのが2003年「フルメタル・パニック? ふもっふ」でした。10年前の水準ではレベルが違う作画と丁寧な作品作りで注目を集め、2005年に制作されたAIRで一気にブレイクしました。



 AIRは2000年に発売された泣きゲーの代名詞な作品で、圧倒的な京アニの作画力と美しい描写が相まって本当に凄いと思いました。そして、京アニがアニメ界において不動の地位を確立したのが2006年の涼宮ハルヒの憂鬱でした。難解なラノベ作品を見事にトレースしながら、物語の話数をバラバラにして作品を放送する斬新な手法で多くのアニメヲタクが誕生しました。アニヲタになった理由はハルヒからという人も多かったですね。



 その後もAIRと同じKey作品であるKanonとCLANNADが制作され、作品の世界感に付加価値を加えた素晴らしい作品は、私の心を動かし多くの涙を流しました。特にCLANNADは私の最も好きな作品の1つで、今でもずっと心の中に残っています。そして、21世紀の深夜アニメの歴史の中で、日常モノというジャンルを確立した2作品を生み出したのも京アニでした。



 2007年に放送されたらき☆すたと2009年・10年に放送されたけいおん!です。女子高生の何気ない日常をヲタク視点と部活視点で描いた作品は、ファンのハートを掴みました。特にけいおん!は、殺伐とした社会とはかけ離れた理想的な日常を描いている事と女の子同士がキャピキャぴしている様子が、アニヲタだけではなく女性ファンを獲得し、2011年には劇場公開され大ヒットしました。



 一方のらき☆すたは、主題歌の今までに無いスタイルの曲が大ヒットしオリコン初登場2位を記録し、忠実に再現された鷲宮神社には「聖地巡礼」と称し多くの観光客が訪れ、社会現象を巻き起こしました。1年間に1本か2本というペースで丁寧に作られた京アニ作品は、ブランド化してファンの支持を集めました。しかし、現在では徐々にブランド力の低下が感じられるようになったのです。




②京アニブランド衰退は必然

 けいおん!でピークを迎えた京都アニメーションですが、徐々に路線を変更していきました。まずはギャグアニメとして制作された日常。今考えればこれは本当に駄目だった。京アニのよさが全く出す事が出来ずに中途半端のまま終了しました。その後は京都アニメーション大賞選ばれ、KAエスマ文庫から発売された作品がアニメ化されました。これは完全に京アニ視点で選ばれた作品で、ファンのニーズがあったわけではありません。




 第1弾として発表された中二病でも恋がしたいは、久々に京アニらしい作品が完成したと思いましたが、以前の勢いはありません。その後に登場したたまこまーけっとと境界の彼方は、はっきり言ってキャラクターの描き方が薄いしストーリーもあまり面白くない。オリジナル作品としてヒットしなかったムントと同じ方向で失敗していると感じました。京アニはトレースは得意であっても、ファンの視点を持っていなかったので自分達が作りたい作品に走った感がありました。1度築いたブランドをあっさり手放してしまったのです。



 京アニは自滅した感がありますが、他にも衰退した理由があるのです。1つ目は作画レベルが他のアニメスタジオでも可能になったのでアドバンテージが無くなった事が原因ではないでしょうか。「ufotable」や「WIT STADIO」は、ここ数年で台頭したアニメ制作会社です。どちらも京アニ以上にクオリティの高い作品を世に送り出しています。こうなってしまうと京アニのアドバンテージは無くなってしまいます。



 2つ目はオリジナル作品の大ヒットです。2011年以降、オリジナル作品が多く発表されヒットしました。まどマギを筆頭にタイバニやガルパンやラブライブなど、ファンのニーズを汲み取り非常にキャラクターを掘り下げた共感を呼んだ作品ばかりです。失速した京アニに取って代わってアニメ界のオリジナル作品ブームを巻き起こしたと思います。ヒットしていた間に他社に抜かれてしまった京アニが一気に衰退したのは必然だったと思います。




 アニメ界において絶大なブランド力があった京アニですが、このまま衰退していくのではないかと思いましたが、女性向けに特化した作品Freeの登場は今後のヒントになるかもしれません。今までの萌え一辺倒からの腐女子狙い撃ちの作画と声優陣のチョイスは、わかっていても女性ファンのハートを掴みました。今後はよりニッチな作品の方が受けると判断するかもしれません。




 しかし私は今までにない京アニのチャレンジが活路を見出すと思っています。例えば、ロボット作品などの新ジャンルの開拓や劇場版に特化した戦略を取れば良いのではないでしょうか。いずれにしても、京アニ復活への道は現状ではかなり厳しいのは事実です。以前の京アニブランドがまた輝いて欲しいと願っています。