柔道連盟が小学生年代の全国大会の廃止する

決断をしたそうです。

 

私はサッカーのコーチとして思うのですが

その決断を、サッカー界がいち早く

下して欲しかったです。

 

元陸上競技日本代表の為末 大さんが

私たちが思うスポーツの環境について

代弁してくれております。

 

 

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全柔連が小学生の全国大会を

廃止するという決定をしました。

 

私は素晴らしい決断だと思います。

なぜ若年層での全国大会を行わない方がいいのか

三つの理由で説明します。

 

①そのスポーツが弱くなるから

②全ての子供がスポーツを楽しめないから

③競技を超えた学びが得られないから

 

まず若年層の全国大会が

成人になってからの競技力向上の

役に立っているかというと

マイナス面の方が多いと考えられます。

 

その理由の一つには早すぎる最適化があります。

 

子供は、"大人が小さくなった"

というわけではなく

大人と子供では特性に違いがあります。

 

発達にばらつきがあると言ってもいいです。

 

例えば体が小さいのに

なぜか子供は字を大きく書きます。

 

それは筋の調整と連動が

うまくいかないから

細かい作業がまだうまくできないからです。

 

その一方でリツイ体制のバランス自体は

大人とそれほど変わらないぐらい

うまくできます。

 

このように子供は

大人のミニサイズではありません。

 

ということは子供の世代の柔道は

大人の柔道のミニサイズではなく

勝利のためには違う戦略が求められる

ということです。

 

早すぎる最適化とは

この子供時代の勝ち方に

最適化してしまったが故に

大人になって本来行き着くレベルまで

いけなくなってしまうことを指します。

 

つまり器が小さくなるということです。

 

柔道はそれほどではないかもしれませんが

日本人が海外の試合に出て

よく聞かれる質問は

「日本人は10代ではあんなに強いのに、20代になってからなぜ弱くなるのか」です。

 

要するに、若年層の時代に

トレーニングをしすぎて

大人になった時に

世界とは戦えなくなっている

というのが現状だと考えています。

 

欧州で中高の全国大会が

禁じられた時のロジックは

「子供たちはスポーツを楽しむべきであり、それは試合に出ることで補欠で試合に出られないことや過剰に勝利至上主義に走ることは避けなければならない」というものだったそうです。

 

全国大会は勝ち抜き戦の構造を作り

敗退と補欠を生みます。

 

日本のスポーツは全てが

「選抜システム」であると言われます。

 

それは全てが

才能を発掘する目的に向かっていて

".全ての子供がスポーツを楽しむ"という

視点の欠如に向けられた批判です。

 

一方で、「勝ちたい子供を制限するのか」という

反対の声もあります。

 

しかし現場に行けばわかるのは

最も勝ちたいのは"大人"です。

 

早い段階で日本一になりましたので

離脱していく選手をたくさんみてきました。

 

そのような選手にある特徴は

本人より周りが興奮していることです。

 

親と指導者が

選手の才能に興奮して舞い上がっている場合

その選手の才能が潰れる可能性が高くなります。

 

なぜなら最も重要な主体性が損なわれるからです。

 

99.9%以上の選手はオリンピックに行けません。

 

アスリートで食っていけるのも

そのぐらいの確率です。

 

ほとんどの選手は

アスリートという職業にはつけません。

 

だからこそ競技から学んだことに

どの程度の普遍性があるかが重要になります。

 

では普遍的な学びとはなんでしょうか?

 

それは少なくとも

自分が何をしようとしているかを知り

何が起きたかを理解し

どうすればいいかを考えることができることで

成立します。

 

リフレクションです。

ただこの能力は育つのに時間がかかります。

 

若年層だけで活躍させようとするならば

この手順を省く方がうまくいきます。

 

つまり、"言われた通りやる人間"

を作ることです。

 

しかし、このような選手は引退した後

苦労します。

 

自分の体では

ある程度のことはしてきたわけですが

一体それがなんだったのか

本人がわかっていないからです。

 

考える力が育っていません。

 

以上の理由から

全国大会の廃止は素晴らしいことだと

私は考えます。

 

ぜひ他競技でも追随してほしいです。

 

為末 大