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ユーロ3カ月半ぶり安値接近、「追加緩和」しても消えぬ懸念

2014/05/27 07:20
 26日の東京外国為替市場でユーロは続落し、対ドルで一時、3カ月半ぶりの安値水準まで接近した。これまで幹部が相次ぎ追加金融緩和の可能性に言及してきた欧州中央銀行(ECB)が来週の理事会で「今度こそ、追加緩和に踏み切る」(国内証券)と見られており、ユーロ売りが進んでいる。ただ、追加緩和を実行に移してユーロの下落基調が続いても、経済の回復につながるかは疑問符が付く。開票作業中の欧州議会選挙では反ユーロ政党の議席拡大が予想され、このままでは議会運営そのものに支障が出て「悪いユーロ安」につながる可能性すらある。

 足元でユーロは対ドルで200日移動平均線(1ユーロ=1.364ドル前後)を下回った。これは「昨年9月以来初めて」(シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジスト)。先週末に独Ifo経済研究所が発表した5月の企業景況感指数が前月より低下。米国の住宅関連指標の好調を受けたドル買いも進み、前週末の海外市場ではおよそ3カ月半ぶりのユーロ安・ドル高水準を付けた。26日の東京市場でもユーロは一段安。トルコリラや南アフリカランドなど新興国通貨に対しても200日線を下抜ける勢いだ。
 ECBが6月5日の定例理事会で、追加の金融緩和を決めるとの観測がユーロの最大の売り材料だ。政策金利の利下げや、余剰マネーをECBに滞留させた場合に手数料を徴収する「マイナス金利」などの対策が市場関係者の間で取り沙汰されている。理事会の開催までは「1ユーロ=1.35ドル台まで下値を切り下げる可能性もある」(三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジスト)と下落基調が続くとの見方が多い。

 一般に通貨安は輸出競争力の向上につながるとされる。過去のECB幹部の一連の発言は、域内経済指標が弱いにもかかわらずユーロ高が進むことでの経済の弱体化を憂慮したものだ。これまでは具体的な行動が伴わず「口先介入」めいた発言が多かったが、さすがに「今回こそ、ゼロ回答はありえない」(三井住友銀行市場営業部為替トレーディンググループの呉田真二グループ長)と市場は見る。
 すでに兆候はある。これまで高リスクとされながら買われ、ユーロ導入後の最低水準にまで下がっていたイタリア、スペイン国債の利回りが上昇に転じた。米国債との金利差が縮小して欧州の高リスク国債の投資資金の流入が減っており、ECB理事会の要因を除いても「長期的に続いたユーロ高のトレンドが変調した」(高島氏)との指摘もある。
 
 とはいえ、実際に金融緩和という行動に移してユーロ安が進んだとしても、経済が回復基調に向かう保証はない。ある欧州系証券によると、ユーロ圏の輸出は為替レートの変動よりも、労働コストとの相関関係が高いという。各国政府が競争力を強化するため、自国内の構造改革を着実に進めることが欠かせない。
 そこで気になるのが、欧州に漂い始めた欧州連合(EU)への悲観的ムードだ。現在投開票が続いている欧州議会選挙では、反EU勢力が躍進するのが確実。欧州各国で、EUに対する一般市民からの信頼感は一様に低下している。欧州債務危機を経て、結束力が強まったようにみえたが、実はその逆。財政危機国に支援する側となった「北」と、厳しい緊縮財政を強いられた「南」の双方で、EUの政策への不満が高まっている。
 一部の政情不安が即ユーロ売りの「本質的な材料」とはされにくいものの、下げ基調が続く通貨の「下値を試す『口実売り』に利用される可能性はある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)。そもそも、EU各国が内向き志向を強めれば、EU体制を維持するための経済改革の自助努力の姿勢も揺らぎかねない。ECBが各国の共感を得られる金融政策を打ち出せるか、さらに注目が増しているのは間違いない。