患者さんにとっては、当たり前のことなんですが、これを健康な人に言っても、なかなか通じません。
付き合いの余りない人に解って貰おうとは思いませんが、息子の進学先の教職員には理解して頂きたいと切に思います。
そうでないと、なんで化学系に進学したのだ?リスクがあるなら、辞めれば良いとなってしまいます。

 

化学物質過敏症の患者さんは、反応する物質が、指数関数的に増えて行きます。
一方、治療とともに、反応する濃度が高くなります。
つまりは低濃度で反応しにくくなります。
日常生活は一見、普通にしていて、服装も普通で飲食店にも普通に入って食事をしていても、医薬品は化学物質の塊で、それを飲んだり、点滴したりすることは、非常にリスクのあることです。

病気になった時、今まで飲んだことがあり、安全に飲めると解ってる医薬品や、メーカーを指定すれば使える医薬品、量を半分等にすれば使える医薬品、そういうことが解っていれば、問題はありません。
しかし、今まで罹ったことのない病気になり、1回も使った事のない医薬品を使うかどうか、何を使うか、どの程度の量なら、安全に使えるかを考えなければならない時があります。

 

そういう時、今まで安全に使えた医薬品と安全に使えなかった医薬品、量を加減しないと使えなかった医薬品の共通点を割り出し、大丈夫な添加物、防腐剤、着色料等を患者が把握しておかなければなりません。
私は常々、MCS患者は引き受け病院がなかなかみつからないと言っていますが、それに対して「別の病院に行けば良い」と言う人がいます。
別の病院に行っても、結局、どんな系統の薬がダメなのか、症状も頭痛程度なのか、意識障害が出るのか、喘息発作か、痙攣か、また、皮内テストを安全にできる程度なのか、パッチテストも安全にできるのか、そういうことまで、本人が医師に伝えなければなりません。
そういう判断をする基礎知識として、化学系なり、バイオ系なり、薬学系への進学に協力して頂きたいとお願いしております。

理解のある病院をみつけてそこへ行けば良いではないか、と受け入れ学校の方は思われるかもしれません。
何もリスクを冒して理系学部に勉強をしに来なくてもと思われるかもしれません。
しかし、いくら理解のある医師であろうと、ダメな物質の傾向やどの程度のリスクがあり、普段からダメだったものに共通する物質を特定する努力を続けていなければ、医薬品も出しようがありません。
化学や薬学、医学を学んでない方が、大概の身の回りの化学合成品は混合物です。その混合物の全ての成分を毎回チェックし、ある程度、過敏性を取得し易そうなものに目をつけて注意をしておくという「勘」は学生時代に養っておかないと、どうしようもありません。
また、医薬品や医療材料は私が選びますからと言って、そうですかと言ってくれる医師は少ないと思います。
患者さんが、薬剤師であったり、化学やバイオ、農芸化学系など、大学等で化学を学んだことのある方なら、成分表や専門書や製薬会社が医師向けに作った資料等を見せて貰って「使ってみます?」と聞かれることもあります。

専門知識も必要ですが、残念ながら場所によっては「肩書」も必要になることもあります。
そういう意味で、是非とも化学物質過敏症の学生の受け入れに息子の進学先だけでなく、これから受験する学生のためにも、協力をして頂けたらと思います。
病気になっても、医療を受けられない苦しさは、日本では周囲で見かけることがなく、ピンとこない方も多いと思いますが、どうか想像力を働かして、一度考えて頂けたらと思います。