三男の武志の出産予定日は、四月九日でした。

  当時住んでいた静岡県の三ヶ日町では第三子以降の出産に、町から十万円のお祝いをすることが決定していたのです。
その施行が四月一日からだったので、役場職員の方から
「きっと林下さんが最初の適用になるので、取材させて下さい」
と言われ……
  広報の表紙にもと言われ、光栄なことだし有難いと思っていました。
 
 そしてまだ産気付く気配もなかった三月の末日、仕事を終えて二階にあがり些細なことから嫁さんと口論になるのです。
感高まった嫁さんが、予定日が近い身体で階段を掛け降り
「おい、お腹大丈夫か」
と言っても返事がない。
  下に降りてみるともう破水してました。
そのまま病院に直行して、産まれたのが22時31分です。
それでも無事に産まれてくれたので笑い話に出来ますが、一歩違えば大変なことでした。



  父ちゃんと母ちゃんのせいで、あと89分遅ければ頂けたお祝いも無しになったし…
学年も違っちゃったな。

  武志、いろいろ申し訳ない。