神奈川県大磯町に魚の捌き方修業に行くにあたり、荷物を最小限にする為に着替え以外には殆ど持たずに伺いました。

有難いことに修業先には時折友人数名が来てくれて、休憩時間には軽く飲みながら談笑するのが定例になっていました。


ランチの責任者である主任が

「清志さん、友達来てるから早くあがって」

よくそう言ってくれて、お言葉に甘えてました。

主任さんにも本当にお世話になったものです。

 

友人と飲みながら

「缶のままじゃなくて、グラスに注いで飲みたいな」

と思った時に頭に浮かんだのは、都内の部屋に置いたままにしてあるタンブラー……

まだ沖縄にいた頃の誕生日に元カノさんがプレゼントしてくれたものを、まだそのままとってありました

自分があげたものは別れたら捨ててくれて構わないし、持ち続けられたらむしろその後の人生の邪魔をしてしまうようで気に掛かる方です。


八年も付き合っていましたから様々なプレゼントを頂いてましたが、自分の中で要約していくとそのタンブラーになるのです。

そして別れてからも気が付くと二人の想い出を振り返ってニヤニヤしている自分がいたので、それがある間はタンブラーも手元に置こうと思いました。

未練があるとかでは全くなく

「幸せな人生を歩んで欲しい」 

とは心から思いますが、振り返るのはただ恋愛の余韻に浸りたいのです。

「楽しかったな…」

とか

「あの時の彼女はさすがだったな」

とか、ゆっくり清算していきたいわけですよ。


タンブラーは言わばその象徴でした。


七月に都内の部屋に戻った時にそのタンブラーを修業先に持ち帰り、ことある毎に使っていました。

そして修業最終日に…

やはり友人が数名修業先にのランチに来てくれて最後の飲み会となりました、そしてその時間も終わり掛けになり吾輩が

「そういうわけで使っていたこのタンブラーだけど、今日限りで捨てるよ」

そう宣言しました。



すると友人の一人が

「じゃあ清志さん、それ俺に下さいよ」

と言うわけですよ。

意外な展開に 

「え、えーっ?

    俺が元カノさんから貰ったこれを?」

「下さい下さい!」


というわけであのタンブラーは今も友人宅にあるのかも知れません。





はい、左様なり♪