煙草をくわえたら
あなたのことを
突然思い出したから
涙の落ちる前に
故郷へ帰ろう

まちの居酒屋の
バイオリン弾きや
似顔絵描きの友達も
今は、もういない
古いまちへ

今でもそこに
あなたがいたら
ぼくは、なんて言うだろう
あなたに会うには
使い残した
時間があまりに
軽すぎて

悔んではいないよ
想いは募っても
そうさ、昔は昔


今から思えば
あなたが、ワーグナーの
交響曲を聴き始めたのが
二人の別れてゆく
しるしになった

なぜならそれから
あなたは次第に
飾ることを覚えたから
たしかに美しくなったけれど

見栄えのしない
おもちゃに飽きた
あなたがいけないわけじゃない
新しい風に
その身を任せ
子どもが大人になっただけ

悔んではいないよ
想いは募っても
そうさ、昔は昔

そうさ、昔は昔