アドレスノートをかえる度 消さねばならない人がある
忘れるはずもない人を 忘れるために消してゆく

古いノートを捨てたなら 思い出までも捨て去るようで
捨てたふりして引き出しの 二度と開けない場所に置く
 
そらで覚えた あの人の 住所と癖のある文字で
『元気ですか』と ある日突然 手紙が届く

来るはずのない人からの 手紙の中味は知っている
自分で書いた戯れの 少しい 悲しい 一人遊び

指が覚えたダイヤルを 夜中にそっと回してる
昔の合図を忠実に守り 二度鳴らして またかけて

出てくれるはずもない人の 部屋で私のベルが鳴る
それだけで胸が高鳴って 息を殺した 一人遊び

出てくれるはずもない人が もしも ふいに出たときには
『間違えました』と切ればいい 『間違えました』と切ればいい