またまた更新に間があいたのでこんな時間に更新です。
今回の話はまったくほのぼの要素のない話になってしまいました。
まあタイトルからもお分かりでしょうけど・・・。
おまけにキョーコちゃんはほとんど出てきておりませんし、蓮様がとんでもなくヘタレです。
そして思いっきりパロディです。
こんな話ですがよろしければどうぞ。




毒舌な天使たち



ここは最近人気の高い都内のとある幼稚園。
夕方だがまだかなりの子どもが残っているその園内では、1人の男が時刻を気にしながらしきりに外の様子を伺っていた。
そんな彼の名は敦賀蓮・・・幼稚園教諭である。
モデル並みに整った容姿と日本人離れした体型で若いお母さん方を虜にしている男だ。
預かり保育がきちんとしていて低料金なのが大人気のこの幼稚園で、それに勝るとも劣らないくらい彼の存在も人気の一因を担っていた。
その蓮がいつも決まって木曜日の夕方に落ち着きがなくなる理由は・・・。

「蓮先生、待ち遠しいのは分かるけどいい加減落ち着いたら?
じゃないとまたキョーコお姉ちゃんにドン引きされるわよ。」

こう言って窘めるのは奏江という少女だ。
少しというかかなりませて大人びた感じのその子の言葉に、これまた大人顔負けの皮肉を得意とする千織が続ける。

「そうそう、先週なんか先生の無駄に輝いた笑顔を見た途端物凄い勢いで後ずさったものね。
いくら会えるのが迎えに来る木曜だけにしたって喜びすぎなのよ。
それにしてもさすがはキョーコお姉さん・・・見かけだけに騙されてる他のバカ女たちと違ってちゃんと本質を見抜けるトコなんて本当に憧れちゃうわ。」

うっとりと心酔したように言う少女に奏江はわざとらしくため息をつく。

「まあ確かに人を見る目はあるとは思うけど、あの呆れるくらいのメルヘン思考はどうにかしてほしいわよ。
だって未だにいつか王子様が迎えに来てくれると本気で信じてるんだから。
我が姉ながらイタすぎて笑いも出やしないったら・・・まったく・・・。
そろそろ夢みるのをやめて現実に目を向けてほしいものだわ・・・。」

「あら、その純粋さがキョーコお姉さんらしくていいんじゃない!
いつまでも変わらないでいてほしいな~。」

「そりゃアンタは身内じゃないからそう思えるんでしょうけど、こっちはたまったもんじゃないんだからね。
毎日そんなことばかり聞かされてみなさい、ブチ切れても仕方ないと思えるようになるから。」

「う~ん・・・そういうものかしらね・・・。」

どうやら彼の気持ちはこの2人にはバレてしまっているようである。
そんな少女たちのどう考えても幼稚園児の会話とは思えない話に蓮が頬を引き攣らせていると、勢いよく1人の女子高生が駆け込んで来た。

「すみません、遅くなりました!!」

息を切らせながらそう叫ぶように口にした姿に彼は思わず破顔してしまう。
するとそれを向けられた彼女は一気に顔を青ざめ謝罪しながら土下座をしようとし、慌てて止めようとする男の背後から彼にしか聞き取れない程度の小声が聞こえてくる。

「・・・一応忠告したのに懲りずにまた繰り返すなんて、学習能力が無いのかしらね。
アレは多分怒りからくる笑顔だと思っての反応よ。」

「まあいいんじゃない?
だって毎回これならキョーコお姉さんに意識してもらえず馬の骨にすらなれそうもないんだから。
本当に私としては助かるわ~、先生が顔はいいクセに好きな人を振り向かせることも出来ないヘタレで・・・。
そのおかげで大事な蝶に群がる虫を駆除する手間が省けるもの・・・。」

「アンタ本当にお姉ちゃんのことが好きねえ・・・。」

「ええ、大好きよ。だから並大抵のヤツになんて絶対に渡さないわ!
ヘタレなんて以ての外よ!!」

などと容赦ない言葉に、必死で宥めていた蓮は内心激しく凹んでしまうのだった。

・・・そんな彼が恋を実らせる日が来るのかどうか・・・今の時点ではそれは誰にも分からない。
取り敢えず分かっているのは、毒舌な天使たちの言葉に落ち込んでいるヒマはないということのみである・・・。



おわり



web拍手 by FC2