いつも、心に留めている言葉がある。
その言葉に諸富先生の『孤独になるためのレッスン』を読み、出会った。

「お前はそんなに偉いのか?」

私は、人を批判しそうになった時、自分自身に向けこの言葉を「問う」。

ノートPCを電車内に置き忘れたその夜、自分の記憶にも自信が持てず、
まず、キャッシュコーナーの前でビラを配っていた男性を疑った。
話してみると日本人ではなかった。

次に、電車に乗っていた人々を疑い、今の社会まで呪った。

お世辞にもカウンセラーとしての思考とは言えない。

近くの交番で、届けだけでも出しておこう、とりあえず届けられる可能性はある。

つい5日前、10/26の出来事である。
22:30分を回っていて今秋いちばん冷え込んだ日だった。
交番の前にいた年配の警官に事情を告げ、用紙に記入した。

正直に言えば、警官に対し「寒いのに大変ですね」と言ったものの、
どこかで警官にさえ、不信感を抱いていた。

「私はそんなに偉いのだろうか?」

一通りの手続きを済ませ、このことで何人の人に迷惑がかかるだろう?と考えた。
警官は、私の届け出たPCケースの特徴などを電話で報告し始めた。

「え、ありましたか?」と、その警官は電話口で言った。
それとほぼ同時に巡回から戻った警官が私を見て、
「いやー、寒いねー」と言った。

”まず、自分を疑う”

カウンセリング的に言えば、これは自分を否定する事ではない。
人を疑っている「自分自身」を認識する事だ。

拾って、届けてくれた方にお礼をしたいと警官に言った。
警官によると、その人は、名前も、連絡先も告げなかったそうだ。

「ありがとうございました!」とおじぎをした私に警官が言った。

「今の世の中って、そんなに捨てたもんじゃないですよ」